ヨーロッパの演劇スタイルを
日本に持ち込みたいと原さん

美しさにこだわり「ロック歌舞伎」
 名古屋・大須の風物詩のひとつが、真夏のオペラと師走の歌舞伎である。この両公演を行っているのが「スーパー一座」だ。ロックミュージックに乗せて繰り広げられるダイナミックな舞台を見ようと、間口五間の大須演芸場に全国から観客が詰め掛ける。今年で17年目を迎える「大須師走歌舞伎」を前に、座長の原智彦さん(58)らのけいこにも熱が入ってきた。
今年で17年目
 「目指したものは『根源歌舞伎』。江戸時代、歌舞伎が興隆した時のバイタリティーを、それに見合う音楽としてロックに乗せた。結果、面白く分かりやすく、新鮮によみがえった」と原さん。確かに、奇をてらっただけのものならば、17年も続きはしない。
 大手企業のサラリーマンだった原さんは、1969年ころ、現在一座を主宰する岩田信市さんと出会った。「脱サラ後は岩田さんといろいろな場所でパフォーマンスを行った。町が劇場だった」。77年に大須へ居を移し、第1回大須大道町人祭りの実行委員長を務めた。そして79年、岩田さんとともにスーパー一座を立ち上げる。
230回の海外公演
 ロック歌舞伎は1年目から大好評となり、83年からの9年間に、230回の海外公演も行った。「ヨーロッパでは演劇が日常生活の感動の一部になっている。この幸せな演劇スタイルを日本に持ち込みたい。江戸時代の歌舞伎興行のスタイルで行える場所を探そう」。こうしてたどり着いたのが大須演芸場だった。のぼり、赤ちょうちん、畳敷きの席では飲食もOK。「最近はお客さんも慣れてきて、早目に来て弁当を食べて、芝居の時間は芝居に集中してくれます」と笑う。
役者として自信
 劇団結成後25年間、スーパー一座ひと筋できた原さんだが、今年から他劇団での客演などの活動を始めた。「昨年暮れの公演で初めて、役者として自分の肉体に自信が持てると思った。自分の中心軸が決まったからです。そのおかげで、最近はいろいろなものが見えて、理解できるようになった。これまでやってきた様々なことに対して、それが何のためかと問われたら、今の自分にたどり着くためだったような気がする」
 今後も「表現に際しては“美しいこと”にこだわっていきたい」と言う。
▼【スーパー一座公演大須師走歌舞伎】
  「三色大盛 絵本太功記(付・小栗栖の長兵衛)」★12月3日〜21日、大須演芸場。明智光秀を主人公に、本能寺の変までをロック歌舞伎で、その後の悲劇、太閣記10段目を本格古典歌舞伎で。さらに光秀を殺し英雄となった百姓の物語をドタバタ喜劇で加えた、3通りの歌舞伎が味わえる舞台。前売り3000円。TEL052・262・5955。