「あの時、不思議な現象を見逃さなかったことがヒット商品につながりました」と話す西川さん

 ヒット商品の誕生は、全く偶然の出来事だった。(株)メカニカルプラネット(愛知県豊橋市)社長の西川公一さん(74)が、鉱石による不思議な発見をしたときのことだ。そのヒット商品は、遠赤外線を発する「オーラ・ストーン」(オーラ石)。学術上の名称は、「ホルンブレンドカミングトン閃石(せんせき)ひん岩」という。数億年前、海底火山の噴火によってマグマが噴出し、急冷却したときにできた火成岩で、産地は中部太平洋の海岸。そのオーラ石は今、衣食住の3分野に活用され、国内外の熱い注目を浴びている。
 不思議な現象が起きたのは、1990(平成2)年の夏のことだ。同社関連の石材会社が注文を受けた庭石を顧客へ届ける際、人手不足のため社長の西川さん自ら、車への荷の積み込みや荷下ろし作業に出向いた。庭石の積み込みの際、西川さんは胸ポケットのたばこを落としてしまったが、そのことに気付かなかった。そして、顧客先での作業が終わり、残った石材を再び車へ積み込むとき、石材の上にあるたばこを見つけた。
 「落としたたばこを拾おうとすると、手ごたえがおかしかった」と西川さん。「落としたたばこの葉がすべて小さく収縮して、たばこの巻き紙がフニャフニャだった」という。
 一見、見過ごしてしまいそうなこうした現象を、西川さんは見過ごさなかった。早速、その鉱石の分析を旧工業技術院名古屋工業技術試験所(名古屋市)に依頼。鑑定の結果その鉱石は、遠赤外線を非常に高く放射していることが分かった。
 この不思議な現象は、たばこの葉が鉱石から出ていた遠赤外線により収縮していたためだった。
 西川さんが命名したオーラ石は、太陽光線の中で最も人間に良いとされる4―14ミクロンの波長の遠赤外線を多量に放射する天然鉱石だった。その特徴は(1)抗菌・防臭性が強い、(2)抗カビ性が高い、(3)消臭性・保温性・耐久性に優れる―などがある。
 まず、西川さんはオーラ石を多目的に活用するため、約0・7ミクロン(1ミクロンは千分の1ミリ)に微粉砕した。「微粉砕には多額の費用が掛かったが、それを乗り越えたことが新製品開発の飛躍台となった」と当時を振り返る。
市場は衣・食・住へ
 微粉砕したオーラ石を使って開発したのが、枕や布団などの寝具。ポリエステルなどにオーラ石の微粉末を練り込んだものだ。さらに西川さんは、オーラ石を使用した商品を自社で製造するほか、大手繊維メーカーなどに原料として供給、メーカー側はその原料で紳士・婦人用肌着やソックス、肩掛けなどを製造販売した。いずれの商品もユーザーからは好評だ。なかでも評判なのは、ひじ・ひざ用のサポーター。ソフトな着け心地に加え、遠赤外線による効果で痛みや疲労を優しくいたわるからだという。
 西川さんの経営方針は、原料だけの販売は基本的にはしないこと。同社の原料を使用するメーカーに、配合率や価格などを事前に申請してもらい、許可したところにのみ原料を供給する。「このやり方だと、品質の悪い製品が出回る心配がない」とか。
 オーラ石を使用した製品は、現在ニュージーランドや中国、韓国などに輸出されている。国内では、従来の衣料品分野に加え、「食」の分野にも広がりを見せている。食品の鮮度を保つために威力を発揮する「遠赤容器」や、おいしく炊飯できる「料理の素」がそれである。

 そして「食」から「住」へ。オーラ石製品の市場開拓は進展する。風呂湯の活性剤「いい湯種」や、省エネ温熱療養器「ラッコ」は、オフィスや自宅での足温器として重宝されている。西川さんはこのほど、躯体(くたい)をオーラ石で作った温熱療養器=写真=を完成した。オーラ石から出る遠赤外線で肩こりなどをほぐそうとするもので、従来の電気マッサージ機を同療養器に置き換えることを狙っており、近く発売する予定だ。
 また、この冬注目されているのが、遠赤外線シート「不思議なフェルト」だ。ポリエステルにオーラ石の微粉末を練り込んだもので、ひざや肩に置くと、遠赤外線による効果で毛細血管の流れが良くなり、冷えが解消されるという。使い捨てカイロのように自ら発熱するものではないので、低温やけどを起こす心配がないのもメリットだ。この「不思議なフェルト」(50×30センチ)は1枚1575円。東急ハンズ名古屋店(名古屋市中村区)で販売されている。
 「頭の中には次に打つ手はいっぱいあるが、なにぶん年なので…」と謙遜(けんそん)する西川さんだが、その表情はまだまだやる気十分の様子だ。
 (株)メカニカルプラネットへの問い合わせはTEL0532・55・3211