肌すべすべの野中さん。「体重は高校から変わっていない」という
 4年に一度の熱い夏がやってきた。アテネの地で頂点を目指す選手たち。一方、県内にも「若者に負けちゃいられない」と情熱を燃やす“シニアスポーツマン”が連日汗を流している。アテネでメダルが期待される「競泳」「柔道」「マラソン」の3種目に取り組むパワフルシニアを紹介。真摯(しんし)に競技に取り組み、心の底からスポーツを愛する気持ちは、五輪選手と変わらない。
 柏市南増尾の柏洋スイマーズ南スクール。小・中学生の教室が終了した午後8時半過ぎ、一番奥のいつものレーンで、市内に住む野中紘司さん(61)は黙々と泳ぎ始めた。自由形、背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライと最初はリラックスして泳ぎ、ターンを繰り返すごとに水面(みなも)にできた波が徐々に大きくなっていく。「50代の時のようにしゃかりきに泳がなくなった。今は1日1時間ほど、2000メートルくらいしか泳がない」とサラリ。
 高校・大学と水泳部に所属。「平凡な選手でしたね。母校の慶応大学水泳部は一流とはいえなかったし、ましてやオリンピックを目指すなんて考えたこともなかった」。表彰台とは無縁な水泳生活だった。
 水泳を離れ、マージャンに傾倒する毎日を送っていた30代後半のある日、幼稚園児の二女を柏洋スイマーズ南スクールに送迎し始めることに。「せっかくの機会だから、わたしももう一度泳いでみようか」と軽い気持ちで水へ飛び込んだ。
柏洋スイマーズ南スクールで汗を流す野中さん
目指すは湘南の海横断
 もともとのめり込みやすい性格。「やると思ったらとことん集中する」という言葉通り、毎日スクールに通って練習に没頭した。そして泳ぐたびに記録を伸ばした。県大会、日本実業団水泳競技大会、日本マスターズ水泳大会と、毎月のように競泳会に出場。特にマスターズでは、50メートル背泳ぎ(60区分・34秒36)の長水路日本記録を保持し、スクールの仲間と成し遂げた200メートルメドレーリレー(200区分・2分04秒04)、200メートルメドレーリレー(240区分2分13秒84)でも日本記録を塗り替えた。昨年は日本実業団水泳競技大会から20年連続出場で表彰された。獲得したメダルは3000個以上。
 「最初は家族が大会に応援に来てくれたんです。でももう最近は、金メダルじゃ喜ばなくなりましたね。箱いっぱいのメダルに、妻はあきれ顔です」
 野中さんのスクール入会当時、南スクールにはマスターズ出場を目指す選手は4、5人ほど。野中さんらの活躍によって徐々に水泳を始める中高年が増え、現在、4つある柏洋スイマーズのスクールに所属しているマスターズ選手だけで15,人弱。南スクールだけで50人も。最高齢者は81歳の男性だとか。「なぜ続けられるか? 仲間がいるからです。特に50代の個性的な仲間が多い。素晴らしい出会いはいつもいいタイミングで起こるんだよね」
 現在、市内でエレベーターのメンテナンスを自営で行っている。好奇心旺盛な性格で、囲碁など水泳以外にもさまざまなものに挑戦している。「何か一つでも趣味を見つけないと楽しめないでしょう。60年生きてきて、ストレスを感じたことが一度もない。(ストレスが)売っていたら買いに行きたいくらい」と、練習中の真剣なまなざしと打って変わって、おどけた表情を見せる。
 アテネに出場する競泳選手には「われわれが過剰に“メダル、メダル”とあおり、プレッシャーがかかっていると思います。それをはねのけて自分のために頑張ってほしい!」とエールを送る。
 野中さんは今月、東京・辰巳で行われる「ジャパンマスターズ2004」に出場する予定。今回で連続48回出場となる。そして8月15日には神奈川の逗子海岸から江の島東浜までを横断する「湘南オープンウオーター2004」10キロ個人の部に出場する。「以前、大学の水泳部創部100周年を祝って、葉山から江の島まで泳ぎ切った。今回はただゴールを目指すだけではなく、上位を狙うよ、もちろん新記録も」。当日、野中さんは62歳の誕生日を迎える。