健康の秘けつを「好き嫌いなく何でもおいしく食べること。お皿以外は残さないわよ」と大浦さん

 19歳で絵筆を握り、画業70年以上。これまでに描いた作品は500点―。千葉市稲毛区在住の画家・大浦掬水さん(90)は日本画の概念にとらわれず、独自の画風を生み出した。自宅兼アトリエで絵を描き、現在は後進の指導もこなしている。年齢を感じさせない凛(りん)とした美しさの画家は、「生涯現役よ」と笑顔を見せる。
 「体調不良や家庭の事情で随時ベストメンバーはそろえられない。それでも毎年60歳の若手が入部してくれるので、ベテランとうまく調和させて、試合を進めています」
 豊かな色彩を放ち、ダイナミックで力強い筆致。筆に勢いがある。個展を開けば、訪れた人から「描いたのは男性でしょう?」と驚かれることも。高齢の小柄な女性が手掛けたとは想像し難いようだ。「人と同じことをやってもつまらないわよ。せっかく自分というひとつだけの個性があるんだから」
 幼いころから絵を描く事が好きだった大浦さんは、19歳から8年間、日本画家・佐藤晃洋氏に師事。「後継者に」と望まれるほど豊かな才能を開花させた。しかし戦後の混乱期で一時筆を置くことに。再び絵筆を握ったのは51歳。画廊で心ひかれた絵の作者である南画家・田岡春径氏との出会いだった。大浦さんは今までため込んでいたエネルギーを発散させて絵の修行に励んだ。
 南画とは中国の絵の流派のひとつで、主に水墨で山水を描いたもの。大浦さんは日本画を基礎に、南画を取り入れた独自の世界を描くようになり、一見すると油絵のような作品は「墨彩画」と呼ばれている。

老舗

 売り絵は一切せず、描画への情熱で手掛けた作品は500点。これらの作品を大勢の人に見てもらおうと、2001年11月には稲毛区宮野木町に「掬水ギャラリー」をオープンさせた。60坪のギャラリーはオリーブ色の3階建てで、100点余りの絵を展観している。
 「まだまだやることがたくさんあって時間が足りないくらいよ」とエネルギッシュな大浦さんは、午前零時就寝、朝4時起床。朝刊に目を通し、朝食を取った後は、気分に任せてキャンバスの前に立つ。そして月に2回は、2時間をかけて7人の弟子の指導に当たる。
 卒寿を迎えても精力的に活動を続ける大浦さんの目標は「画家としての足跡をまとめること。絵筆は生涯離さない。絵を描くことがわたしの人生だから」
【おおうら・きくすい】1914年東京・本所生まれ。日本自由画壇常任理事。水静会主宰。1992年第18回日本自由画壇展文部大臣奨励賞受賞など多数。東京・大倉画廊や資生堂ギャラリーなどで個展も開催。