早朝から晴れ上がった厳寒の1月11日、市民と消防の祭典「日立消防出初式」に集まった消防士や市民約1000人を前に、皆川登さん(65)率いる「助川ばやし保存会」のメンバー12人が「浜囃し」や「にんぱ囃し」を披露して祭典に華を添えた。
 皆川さんは「子供のころからお祭りが大好きだった」と話す。昭和48年、地元の古老の発案で「助川ばやし保存会」が結成されるや、請われて入会。35歳のサラリーマンのときだった。6年後、2代目会長に推されて以来30年、会社は5年前に定年退職したが、会長職は今も続けている。
 助川ばやしは、日立市旧助川地区に古くから伝わる祭りばやし。江戸時代から神社の祭礼には舞屋台の上で軽快な笛や太鼓の音を奉納してきた。昨年10月には同市鹿島町の鹿嶋神社で、江戸後期から伝わる「旧西上町舞屋台」(市工芸文化財)の上でおはやしを奉納したばかり。
 「最近は祭りの形が変わったね」とちょっぴり寂しそう。結成当時、氏神様への奉納、市の年中行事である春のさくら祭、夏のあんどん祭、秋のよかっぺ祭が中心だったが、舞屋台が廃れ、舞台がステージに代わると老人ホームや幼稚園への慰問、結婚式や記念式典に招かれることが多くなった。「会場の雰囲気を壊さないよう、それでいて伝統の調子は狂わせないよう」苦労するという。それでも、慰問した老人ホームや幼稚園で、「涙を流しながら聴いてくれる老人やうれしそうに太鼓に手拍子してくれる幼稚園児の姿に接するとやってよかったとしみじみ思う」。皆川さんは「日本人には生理的に太鼓の音が合っている」とも話す。しかし、奏者が芸能人化することには抵抗が強い。
 悩みもある。会員は皆、仕事を別に持っている。練習時間の調整も難しいが、会員不足が最大の悩み。現会員の年齢は32歳から71歳。年々高齢化が進んでいるので若年会員の補強が急務だ。
 もうひとつの悩みは練習場の確保。太鼓の音だけに騒音の苦情に悩まされてきた。今は日立シビックセンター内の防音室を借りているが、空き時間が限られるため練習が不定期になる不便がある。大太鼓6張り、小太鼓8張り、鼓2張り、かね3個、笛5本の道具類や法被はすべて自前調達。経費の工面 にも苦労がある。
 1曲を一人前にたたけるようになるには少なくとも1年を要する。同会の持ちばやし6曲をマスターするには数年かかる。根気と体力が必要だ。
 4月には日立さくら祭への出番が控えている。来年5月には7年に一度の同市内三社合同祭(神峯神社、鹿島町鹿嶋神社、会瀬町鹿嶋神社)の大舞台がある。若いときからの趣味の釣りもバレーボール(日立バレーボール協会理事)もこのところごぶさた続き。加えて日立製作所大みか工場老友会の役員も務める多忙さ。しかし、気力、体力どちらもまだまだ元気な皆川さん。保存会への入会希望者は同会事務局、川崎までTEL 0294・23・3280