左から正喜さん、めぐみさん、朋子さん
 東海村にある身体障害者作業所「ベーカリーたんぽぽ」がNPO法人化を目指している。ここは夫婦で営む手作りにこだわったパン工房だ。
 中村正喜さん(62)、朋子さん(56)夫妻が末娘のめぐみさんの異変に気付いたのは、1歳前後のころ。東京大学付属病院に出向き、初めて「右片側肥大症」だと知らされた。
 「それから1年半を過ぎても立つことができず、4歳になって何とか歩行できるようになりましたが、誰かに支えてもらってやっと歩けるという状態でした」。中村さん夫妻には、重く苦しい日々が続いた。
 東大病院の紹介で、専門医師のいる帝京大学付属病院に転院。そこで、わが子よりもっと重度の障害児がたくさんいることを知る。「世の中にはいろいろな障害を背負った子がいると知ったとき、わたしたちはこの子と一緒に生きていく力を得ました」
 28年前、将来は畑にしようと買った山林150坪。「ここに、めぐみと同じような障害で悩む子供のためにログハウスを造ろう」と思い立った。建面積40坪のパン工房である。
 平成10年、多くの人たちに支えられ「ベーカリーたんぽぽ」が誕生した。「完全機械化も可能ですが、ここはすべて手作りでやります」と朋子さん。
 作業する子供らに支払う給料はとても少ない。「でも自分で働いて得たお金の大切さを彼らは知っています」。成人したとき、国から支給される補助金もわずか。とても独立して生活できる金額ではない。「そのためにも自立できる技術を身に付けさせてやらないと」
 NPO法人になれば、国や地方団体からの補助申請の道も開ける。今、中村さん夫妻は慣れない申請書の準備に取り組んでいる。地元の市民団体も、応援の手を差し伸べてくれるようになった。「ようやく、世の中が少しずつ福祉に目を向けてくれるようになりました」と、中村さん夫妻は笑顔で話す。