「自分のイメージを膨らませて、
いろいろな作品を創ることが幸せです」
と瀬尾さん

 愛らしい人形、四季を彩る花々など、日本古来の伝統行事や季節の風物詩に合わせられた細工物。江戸時代に大奥や旗本、裕福な商家の娘たちが、大切に着ていたちりめん着物の残り布や傷んでいない部分を使って作っていたのが、伝承ちりめん手芸の始まりである。日立市東多賀町の瀬尾育子さん(79)は、伝承ちりめん手芸家として袋物や箱物、押し絵、御殿まり、人形などをはじめ、花々、十二支の琴爪入れ、香袋など多種多様の作品を作っている。
型紙で構想練る
 瀬尾さんが伝承ちりめん手芸を知ったのは、今から約60年前にさかのぼる。「昭和21年、私が戦後間もなく結婚した時、和裁の先生がお祝いにユリの花の押し絵の箱をくださったの。その感激は今でもよく覚えているほどです。世の中に美しいものが何も無い時でしたから」
 1981(昭和56)年にご主人を失くし、心のよりどころを求めていた時、ある月刊誌で伝承ちりめん手芸作家・望月葉瑠さん(故人)の作品に出合う。そして、83年から2年3カ月の間、伝承ちりめん手芸の基礎を学んだ。
 図書館、古本屋、古美術品店などを訪ねて伝承ちりめん手芸の型紙を収集し、黒い線の型紙から布の生地や色などを考え、自分流にアレンジした。今では、数多くある伝承ちりめん手芸の「琴爪入れ」と「袋物」のほとんどを作り、それが基礎になって創作ちりめん細工の作製に発展させている。
 材料となるちりめんは、時代布を扱う店「時代布と時代衣装 池田」(東京都港区)で購入。愛らしく美しい作品の数々は、その日本的色彩の色合わせが「洗練されている」と評判だ。

手つなぎ人形

ボタンの香袋

雅びな

仏美術館に展示
 瀬尾さんの足跡は輝かしいものばかりだ。87年に初めての個展を自宅で開催し、ちりめん手芸の教室も開いた。弟子の中にはカルチャーセンターなどで教えている人や、わざわざ東京から通って来る人も。91年にフランス・メネシー市の美術館に作品が永久展示され、94年には、新作となる十二支の形をした「琴爪入れ十二支」と季節の花を押し絵にした「袋物12カ月」を発表、NHKテレビで放映された。そして97年、東京・銀座のタカゲン画廊で個展を開き、平安時代の衣装を参考にした「雅びな」と「手つなぎ人形袋」を発表した。
 おととしには、日立市のアートギャラリーパシフィックで開いた個展でユリの着物を発表し、昨年は水戸市の常陽資料館で個展を開催した。
 また、昨年1月号から12月号まで県北タウン誌「月刊びばじょいふる」の表紙を飾ったほか、昨年3月発行の実例集「古布に魅せられた暮らし」(学研)に多くの作品が掲載されるなど、目覚ましい活躍である。
品が一番大切
 「私が一番大切にしていることは、作品に品があるか、華やかさがあるかということです。こういうものを作ろう、と思って創作している時が一番幸せですね。ちりめん手芸を教えることにより、仲間もたくさんできてとても楽しいです」と、瀬尾さんはちりめん手芸への熱い思いを語っている。