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60歳定年は強制解雇
定年を2年後に控えて、郷里の朝日町へ帰る準備をしている熊沢誠甲南大教授(66)に、労働問題の専門家として「定年」について聞いてみた。「60歳定年は強制解雇だ」「企業は定年延長と引き換えに新規採用を手控える」「年金低減と子どもの扶養費増でこれからの定年後は大変だ」といった話には考えさせられた。
−ご自身の定年後はどうですか−
定年まで2年余ですが、いっぱい勤めるかどうかは未定です。もう1度どこかの教授というつもりはなく、帰省して研究の集大成の著述に専念するつもりです。平成不況以後、現代日本の労働を分析する「能力主義と企業社会」(1997年、岩波新書)、「女性労働と企業社会」(2000年、同)、「リストラとワークシェアリング」(2003年、同)の3書を出し、書くべきことは書き終えた感じです。そこで、労働組合の形がい化を始め、現在の閉そく状態がどうしてこうなったかを、アメリカの歴史学者ジョン・ダワーの著書「敗北を抱きしめて」のような、大きな膨らみを持った歴史読み物として書きたいと思っています。
−労働問題として「定年」をどう考えますか−
一般的な定年60歳は、まだまだ働ける年齢なのに、これを切るのは強制解雇です。雇用延長はすべきですが、企業は引き換えに若年の新規採用を手控えます。だから労働者側は労働時間の短縮、つまり収入減を前提としないと、問題は解決しません。高年者の労働時間漸減分が若年者の雇用漸増分に充てられ、新規雇用や非社員の正社員化を進めるという世代間リレーが考えられるべきです。
もう一つ大きな問題は、この過程で、あるいはこの前段階のリストラで、企業が能力主義によって労働者を選別することです。この人は定年延長を認め、あの人は延長しないといった企業本位の判別です。労働者は労働時間つまり収入の減少を阻止したいからといって、企業側のこの能力主義選別を認めてはなりません。能力主義選別は社会的差別に増してより非人間的な行為です。失業者の自殺の増加がそれを示しています。子どもに対して「能力がないから会社を辞めさせられた」などといえますか。
子の扶養費増と年金減ズッシリ
−定年後の問題はありませんか−
これまでの定年世代は恵まれています。現役時代の高度経済成長のおかげで、年金もそこそこのものが保証されており、子どもも自立していて扶養費がかかりません。ところが、これから定年を迎える団塊の世代は、年金の低減化に加えて、収入不足の子への援助出費がかさみ、大変な困難に直面します。年金財政を担う世代が、未就職者やフリーター、アルバイター、非正社員などで低収入が強いられ、いつまでも親の庇護(ひご)を必要とします。
−経済的制約がないとすれば、どんな提言ができますか−
会社勤めの人の多くは、地域社会とのかかわりが薄いのではないでしょうか。そこで、定年者同士が現役時代の得意分野について相互に教師になり合う関係を築き、地域交流を図ることを考えます。例えば、パソコンに詳しい人と花作りにたけた人がお互いに教え合うといったサービス交換で、地縁を結ぶのです。私も基本的にそのような定年後生活を考えています。
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