「欠落した青春を埋めるに大学生活を
楽しんでいます」という奥田満子さん
 「社会人入学が決まった時は、本当にうれしくて興奮しました。今は学ぶ喜びを満喫して、充実した大学生活を送っています」−大学進学を望みながらも果たせなかった“欠落した青春”を取り戻したいと、四日市市東新町の奥田満子さん(66)は、還暦を過ぎてから四日市大学総合政策学部へ社会人入学した。この春から学生生活後半が始まり、「人間の探求」の専門演習(ゼミナール)に取り掛かる。
 奥田さんは入学直後の2003(平成15)年5月、文章表現論の講義で「社会人入学して」と題する作文を書いた。「大学を出て何になるのか」といった疑問も耳にするが、「自分はただ、学びたいだけである」ときっぱり所信を記した。若い学生たちと席を並べ、学識豊かな先生方と身近に話せるのは幸せで、「ひとりでに心が弾む。あちこち痛かった足腰もシャンとなった」と、心底の喜びを表現した。担当教授も「社会人として大学に入って学ぶ感激が、ごく普通に素直に記述されている」と、高く評価した。
 奥田さんの進学の動機は40数年前にあった。現役で東京の大学への進学を目指したが不合格、当時の女性では極めて少数だった浪人生活を経験した。1年後に合格したが、失恋が元で極度のホームシックにかかり、経済的な理由もあり、進学を断念、帰郷してしまった。
 以来「学びへの道を放棄した」という大きな欠落感を抱きながら、就職、結婚、夫との死別、独力での子育てという人生を送ってきた。高校の担任教諭の「無知は罪悪だ」という言葉が頭から離れず、勉学への枯渇感を増し続けて定年世代に入った。
 事務員として勤めていた医院が閉鎖されることになり、退職した。長男も4年前に所帯を持って同居してくれ、やっと自分の自由な時間が持てるようになった。そんな時、高校の同級生から紹介された四日市大学の「1日留学」の催しに出席したところ刺激を受け、埋もれていた向学心に火が付いた。
 「社会への貢献という目標があるわけでもなく、全く自分の都合で入学したので、申し訳ないような気持ちですが、大学へ行ける喜びは何ものにも変えられません。先生方も、若い人と分け隔てなく指導して下さり、感激です。時間外の補講や研究室での面談など、むしろ一般学生より親切に応対してもらっています。他の人にも縁があれば、ぜひ社会人入学を勧めます」
 社会人学生は勉学意欲が旺盛で、一般学生よりも前の方の席で聴講するうえ、出席率も高いため講義の成績は良い。
 奥田さんも「教えられたことを覚えるだけの受け身の学習態度ではなく、自ら課題を探し出す研究姿勢が必要」と、先生から指摘されたことがある。
 だが「勉学にも旬があって、知識の吸収が遅かったり、出来なかったりして戸惑うことがあります。でも、それはそれとして開き直って、大学生活を楽しんでいます」という。
 社会人学生には、すでに社会的活動をしていてそれを支えるため、あるいは裏打ちするために、熱心に学んでいる人もいる。そのような仲間との交流も、奥田さんには新鮮な刺激となった。
 昨夏は憲法学の教授に誘われて、ハンガリーへ町づくり研修の「田園牧歌の旅」を体験した。
 また、3月中旬には政治学の教授らと、「市民社会研究所」の研修でロンドンへ出掛ける。
奥田さんにとっては、今が青春の真っただ中だ。