独立行政法人
高齢・障害者雇用支援機構−提供

 再就職「選ばれるには口説き力」。今年10月、30数年勤めた県内の企業を早期退職した宮城太郎さん(56・仮想上の人物)は今、最就職探しに懸命だ。ハローワークの紹介で一度ある会社の面接を受けたが、不採用。自分のどこがだめだったのか、いろいろな人にアドバイスを求めると、「選ばれる」にはもっと自分を売り込む「口説き力」を身に付けなければ、と痛感したのだが─。
 宮城さんが勤めていた会社は県内では大手に数えられているプラスチックの生活用品のメーカーだ。この工場で彼はずっと製造の現場に立ってきた。この10年ほどは生産工程を管理するポストに就き、常に50人ぐらいの部下を預かる立場だった。
 会社が中国に大規模な新工場を建てたのが、3年前。生産の比重は次第に新工場に移り、宮城さんが働く工場は稼働を停止している機械が目立つようになってきた。
 中国の工場への転勤を会社から打診されたのは今年の4月だった。断れば退社の道しか残されていないのを承知で、転勤できないと返事をした。同居している高齢の両親、昨年がんの手術をし、再発が懸念される妻の体の具合を考えると、今、家を空け、単身赴任することはできなかった。
 60歳の定年より4年早く宮城さんは早期退職、2週間ほどの骨休みの期間を置いてから、ハローワーク仙台を訪れ、再就職活動のスタートを切った。
 中高年の再就職探しが厳しいのは新聞やテレビを見て知っていたが、ハローワークで聞かされた実情は想像以上だった。
 44歳までの求人は、求職者を上回っていたが、45歳以上は逆に求職者数が求人数を上回り、特に宮城さんが属する年齢帯よりも「狭き門」であることが分かった。
 さらに、50歳以上の求職者が、離職してから1年以内に再就職先を見付けることができるのは、おおよそ4人に1人の確立だという。
 また、離職してから3カ月以内に就職先を決めたほうがいいとも聞いた。3カ月を超えるブランクは求人側に好印象を与えないからだ。
 待遇面でも今までより、ずっと厳しくなりそうだ。求人先のそのほとんどは中小企業で、提示している給与は50歳代半ばで手取り16,17万円といったところ。もらっていた給料の約半額だ。資格や特別な技能があれば、もっと高額になるが宮城さんにはそうしたものはない。
 初回の面接は11月の初めだった。従業員30人ほどの工場で、プラスチック製の食器を作っているらしい。生産の規模が違うものの製造の工程には共通点が多いようだ。仕事は生産に関する部材の手配やラインの構築。「管理職として働いてほしい」という。これならそこそこやれる。宮城さんはひそかに自信を深めた。
 宮城さんを面接したその会社の社長は、彼より少し年上といった感じだった。社長からは社会保険や厚生年金、勤務日数などの説明があり、宮城さんからは質問に答える形で、家族構成や前の会社でどんな仕事をしてきたか、そこを辞めるに至ったいきさつなどを話した。
 話している間も常に次の言葉があった。ハローワークからも、再就職に苦労してやっと第2の職場を探し得た知人からも受けた助言だった。