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演奏の腕も確かな松島ベンチャーズ
リードギター:千葉哲郎さん
リズムギター:中井敏夫さん
ベース:塚本ヒサシさん
ドラムス:熊谷正弘さん
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夜の9時半。登米町の商店街はひっそりしている。どの店もシャッターを下ろし、歩く人もほとんどいない。時々自動車がスピードをあげて通り過ぎるだけだ。地方の小さな町ならどこにでも見られる光景だ。しかし、ここではひとつ違うことがある。ベンチャーズがいる。いや、ベンチャーズ全盛期のベンチャーズサウンドを演奏するベンチャーズ大好きの4人組のオジサンたちがいる。
暗い通りの、そこだけぽっかりと明かりに浮かぶライブハウスの入り口から急な階段を上がり、ドアを押すと―。
オープニングはおなじみの「ダイヤモンド・ヘッド」。ビートの効いたサウンドが店内にあふれ、やがて、お待ちかねのフレーズ「テケテケ、テケテケ」。4人が結成するバンドのおはこだ。開店間もない時間なので、客席の入りは4,5人ほどだが、みんなテケテケはベンチャーズとエレキギターを指すという人が多い50,60代の中高年。
続いて「パイプライン」など懐かしい曲が次々と演奏される。
ここでライブハウス風にメンバー紹介。リードギター千葉哲郎(51・自営業・中田町)、リズムギター中井敏夫(50・会社員・石巻市)、ベース塚本ヒサシ(52・製菓業・登米町)、ドラム熊谷正弘(49・自動車整備士・金成町)。以上「松島ベンチャーズ」―。
4人は仕事を終えてから、メンバーのリーダー塚本さんが開くライブハウス「ツイスト・アゲイン」に集まる。金曜日の夜、週に一度だけの演奏だ。この店は塚本さんのケーキ屋の店の2階だ。
バンド名の「松島」は以前このグループに加わっていたメンバーのうちの2人が航空自衛隊松島基地の隊員であったため。この顔ぶれになったのは6年半前からだ。塚本さんは、ベンチャーズのナンバーを演奏するバンドを率いて20年目になる。
その塚本さんがベンチャーズと出会ったのは、40年ほど昔のこと。「ダイヤモンド・ヘッド」収録のLPレコードを友だちが聴かせてくれたのがきっかけだった。
「テケテケにびっくりした。一体どういう風にしたらあんな音出せるのだろうかって」
やがてベンチャーズがテレビにも映るようになって、テケテケの謎は解けたが、やり方が分かると「それなら自分も」と10歳の塚本少年はすっかりギター小僧に。何とかまねができるようになったときには、商店街の肉屋や雑貨屋の同級生とバンドを組んでいた。
デビューは中学の卒業生を送る会。見事、テケテケとやって大喝さいを受けた。「エレキギターなんて不良のやること」という学校中の反対を校長先生が1人「俺が責任を持つから」と押し切って実現した。
以来、塚本さんの人生はベンチャーズと二人三脚。ベンチャーズの初代メンバーから途中で抜けたギターの名手ノーキー・エドワーズが単独で来日し、各地で公演した際には、ベーシストとして彼と行動を共にした。93年のこと。生涯忘れられない出来事となった。
いまの松島ベンチャーズがやりたいことは、このノーキー・エドワーズがリードギターとして活躍していた当時のベンチャーズの演奏を再現させること。エドワーズがいた63年から6年間の演奏が4人には最高の出来と思うからだ。
その目標に近づきつつあると、塚本さんは感じるときがある。ほかのメンバーから独りはずれ、彼らの練習を聴くときがあるが、そんな折ふっと、錯覚に陥ってしまうという。自分はいま40年前のベンチャーズを聴いているのでは−。ベンチャーズのコピーバンドとしての練達を近ごろ実感する。
開演から1時間ほど。客席は半分ぐらいの入り。われらのベンチャーズの演奏はごきげんに続く。コピーバンドとしてのレパートリーは約60曲。「60、70歳になってもこうしてやってますよ」。意気軒高、松島ベンチャーズ。