多くのお年寄りの前であいさつする「瞼の母」のメンバーたち
定年退職した高齢者らが中心となり結成された「尾上劇団」は素人のボランティア劇団。県内の老人ホームや高齢者福祉施設を慰安訪問し、さまざまなショーを行っている。公演のメインは人情芝居「瞼(まぶた)の母」。ほかにも手品、歌、童謡合唱など多彩 なパフォーマンスで観客を沸かせ、多くのお年寄りに”元気”を届け続けている。
劇団発足は三年前。越谷市にある丸山幸男さん(五九)が経営する理髪店「ボンボン」に通 う定年退職後の人らによって結成された。丸山さんと友人が旅行先で、旅芸人が演じる時代劇に夢中で楽しむお年寄りの姿を偶然見掛け、「私たちも劇団をやってみよう」と思い立ったのがきっかけだ。当初は四人で活動を始めたが、理髪店に通 う中高年のお客さんに声を掛けるとあっという間に数十人集まった。現在では役者とスタッフを含めてメンバーは合計百二十八人。平均年齢は六十七歳になる。
公演は主に二部に分かれている。第一部はバラエティーショー。手品、歌、ぬ いぐるみパフォーマンス、着物ショーなどさまざま。第二部は人情芝居「瞼の母」。主な登場人物は番場の忠太郎役の丸山さん、母役の加藤和子さん(五九)、三味線老婦人役の山崎貴美子さん(六五)、番頭役の伊藤肇さん(六〇)のほか合計七人。長谷川伸原作の台本も、劇団用にとオリジナルにアレンジした。劇のクライマックスで忠太郎が生き別 れた母と再会するシーンでは、多くのお年寄りが涙を流して食い入るようにステージを見つめる。
役者として活動するのは団員の中でもわずかだが、裏方として活動する人にはさまざまな経歴を持った人が多い。舞台美術担当は長年、テレビ局の舞台・大道具の仕事をしていた今泉俊徳さん(七一)。バラエティーショーのピアノは幼稚園の先生だった市野川玲子さん(七五)。父親が元旅役者で一緒に旅していた経験から座長に選ばれた山崎さんが演出指導を行う。舞踊指導は若いころ、踊り子として活躍した岡恵美子さん(八〇)。「特別 な経験なんて全く必要ありません。共に楽しく活動しましょう」と、同劇団では一緒に活動できる人を広く募っている。
けいこ場は越谷市七左町の鉄鋼工場の社員寮跡。約二十坪の部屋の中には仙台たんす、切り株、長火鉢、竹で作ったススキ、衣こう、道祖神、田園風景の書かれた横八メートル×縦四メートルの背景画など本格的な舞台セットが並ぶ。一見ひっそりとした建物だが、中に入ると団員らの熱気がひしひしと伝わってくる。
●出演依頼が絶えず歌や手品も劇団員を広く募集
今月末には市内の公民館で「クリスマスパーティー」を開催。平成十六年一月には岩槻市の老人福祉センターで一般 市民公演も予定している。好評を博しているステージは、県内外の老人ホームや高齢者施設からも出演依頼が絶えない。
「全く知らなかった人と劇団を通して知り合いになれた。尾上劇団は私の宝物」と座長の山崎さん。「県内に限らず、いつか全国各地の老人ホームを回りたい。多くのお年寄りに元気を運びたいね」と意気込みを話す丸山さん。夢はなお膨らむばかりだ。公演依頼や劇団の問い合わせは丸山さんまでTEL090・2536・6911