「ひとつでも患者さんが喜ぶような
義歯を作りたい」と紀陸さん
 4月18日は「良い歯の日」。鴻巣市本町にある紀陸歯科医院院長の紀陸(きろく)一夫さん(84)は現役の歯科医師。「どんどん丈夫になって、思わずここまできちゃったよ」と笑顔で冗談を言うほど、今も元気に仕事を続けている。「足が動けなくなるまでずっと頑張りたいですね」と力強く話す紀陸さん。目標は高く90歳、100歳と“生涯現役”を目指す。

 こぢんまりとした室内には3台の診察台。ほかにもピンセット、鏡、うがい台などさまざまな診察器具が所狭しと並ぶ。看護師はいない。受け付け業務もすべて一人。時折、笑い声が聞こえるなど、診察室はとても和やかな雰囲気。「患者さんとはよく会話しますよ。コミュニケーションは常に取ってますね」と紀陸さん。
 大正9(1920)年、鴻巣市本町生まれ。歯科医師になろうと思ったのは県立熊谷中学校(現県立熊谷高等学校)に在学中。進路で迷っていたときに親類の人から「歯科医師はどうだ」と勧められ、歯科医師の道を目指した。その後、東京歯科医学専門学校(現東京歯科大学)に進学し、昭和18年6月に紀陸歯科医院を開業した。
 紀陸さんは決まって毎朝6時に起床する。診察は予約制ではないので、中には朝早く訪れる患者もいるとか。「昔は朝早く、近郊の吉見や川里から田植えの最中に、はだしで来る患者さんも多かった。足を洗ってあげて診察してから、急いで田んぼに帰って行ったもんだよ」と開業当時を懐かしそうに振り返る。
 午前の診察は8時半ごろから正午まで。午後は2時から夕方の6時半ごろまで仕事を続ける。1日8時間の勤務時間にも、「よく考えるとこれが健康にいいんじゃないかな。診察中はいすに座らず、立ったままであっちこっちに動いているから」とニコリ。
 学生時代に風邪にかかったのと、30代の時にヘルニアで手術をした以外、「大きなけがや病気も、覚えてないくらいしたことがない」とか。現在も特に薬は飲んでおらず、もちろん通院もしていない。
健康のためのゴルフ 薬も病院にも無縁 コミュニケーション大事に
 趣味は30年以上続けているというゴルフ。「スコアを競うのではなく、健康のためにと歩くゴルフだから。本当にゴルフは楽しいですよ」と満面の笑み。今も月に1回のペースで東松山や熊谷のコースに出掛け、全18ホールを回る。
 現在は治療よりも、義歯を作る仕事の方が多い。「歯によって人間の顔は大きく印象が変わります。できるだけ患者さんの心を読み取り、ひとつでも患者さんが満足してくれるような義歯を作っていきたいね」
 たばこは吸わない。酒は飲んでも焼酎のお湯割りをコップ1杯だけ。健康の秘けつを聞くと「特にこれって何もやってないよ。寿命は神様だけが知っていることですから」と笑顔で話す紀陸さん。鴻巣で病院を開業して60余年。きょうもかくしゃくと仕事に励む。