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所沢市山口の上田武彦さん(70)は、サラリーマン時代から撮り集めたSL写真をまとめ、自費出版した。8年前に出版した「ふるさとの汽車」に続く2冊目のタイトルは「夢の蒸気機関車」。「昨年迎えた古希の記念に」と出版した写真集には、四季折々の風景の中を力強く走る蒸気機関車の姿が色鮮やかに写し出されている。
上田さんは元化学メーカー勤務。サラリーマン時代からライフワークとして風景写真を撮り続けていた。SLは昭和47年に撮影したのが最初の1枚。それからも現役最後の会津・只見線(福島県)のC11型や秩父鉄道に復活したC58型など数多くのSL写真を撮影。定年退職した現在も、各地で復活したSLの雄姿を追い求めている。
「わたしにとって蒸気機関車は古き心の友であり、見果てぬ夢」と話す上田さんは昭和8年、神戸市須磨区生まれ。東京の小学校に入学後、集団疎開となった長野で約1年半を過ごす。小学6年生の時、母親の実家があった原爆が落とされて間もない広島へ。ここで上田さんは少年期を過ごした。「市内は焼け野原で焼け跡の中を市電が走っていた。真っ赤に焼け果てた市電の残がいがあちこちにありました」。当時、自宅があった可部線の安芸飯室(あきいむろ)駅から学校のある横川駅まで蒸気機関車で毎日通った。「電車の中はいつもすし詰め状態。ある時は機関車の最前列のデッキにしがみつくように、またある時は屋根に乗って機関車の煙で真っ黒になったこともありましたよ」。道路などの復興がままならない当時は、どこへ行くにも蒸気機関車が中心だった。学童疎開や食料の買い出し、そして毎日の通学と、「子どものころ蒸気機関車はいつも頼りになる、一番身近な存在だった」と上田さんは懐かしそうに話す。
サラリーマン時代も、機会あるたびに新しいカメラで”旧友”の姿を撮影しようと試みるが、鉄道近代化の潮流の中で蒸気機関車はすっかり姿を消していた。
昭和63年3月、秩父の長瀞で大きな汽笛をこだまさせ荒川の鉄橋を走るSLに出会った時は「シゴハチ(C58型)を見た瞬間、別れた友人に再会したような感動を覚えました」と上田さん。今でも当時の大きな汽笛の音や、モクモクと立ち上る黒煙はしっかり頭の中に焼き付いているという。
数ある写真の中でも、一番思い入れのある写真は、平成13年の秋に秩父鉄道の親鼻と上長瀞間を走るSLを撮った1枚。風や天候などさまざまな条件を計算し、2年間何度も現地へ足を運んでようやく撮影した。「煙りのポエジー」と名付けた1枚には、白煙をなびかせ秩父の大自然の中を勇ましく走る蒸気機関車の姿が写し出されている。
ほかにも写真集には秩父鉄道、JR上越線(群馬県)、JR磐越西線(福島県)、真岡鉄道(栃木県)、奥羽本線(山形県)など、各地で撮った作品が約70点。大雪の磐越西線や真夏の秩父鉄道、海岸沿いの八戸線(青森県)をさっそうと走るSLなどさまざまだ。
「水と石炭をエネルギーとして走る蒸気機関車には、ほかの近代車両にはない迫力と美しさがあります。この写真集の中から蒸気機関車の素晴らしさを感じていただけたらいいですね」と上田さん。
写真集は定価2500円(税込み)、送料500円で希望者に配布している。問い合わせは上田さんまで TEL 042・926・7044
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