現代民話は、昔話と同じように、今生きている人たちの中からふつふつと生まれつつある。「ああ、そんな話なら知ってる」と日常生活の中で体験したこと、聞いたこと。人の口から口へと新たな物語が次世代へ語り継がれる。あなたも語り部となってもっと語り伝えて欲しい。現代民話研究の第一人者、松谷みよ子さんに現代民話の周辺を伺った。
作家 松谷みよ子さん
千葉県の大学生が語ってくれたもの。祖父が死んだものの、葬式の日に生き帰ったという話。祖父によると、あの世で三途の川まで来ると、若い女が泣いていた。わけを聞くと、自分は某村に嫁いできた嫁で嫁ぎ先の姑がケチで死に装束を着させてくれなかった。自分は恥ずかしくてあの世へ行けない。あなたが現世に戻って持ってきて欲しいという。そこで、不憫(ふびん)思った祖父は快く引き受け、帰ってきた。祖父は某村を訪ねると、その姑はいて、確かに嫁は居たし、先日死んだし、死に装束は着けさせなかったという。そこで死に装束を初七日に仏壇に供えたという。
同じような話が徳島県にも残っていた。偶然の一致だろうか。ほかの民話にも死界と現世を行き来する例があちこちであり、同一の話に遭遇することが多いそうだ。
松谷さんは、五十年余り、全国を歩いて民話の採訪の旅を続けてきたが、河童伝説、天狗、神隠し、幽霊など不思議な話に遭遇する。それは西洋の唯物論や合理主義者には理解しきれない、わかりにくいことだろう。
旧日本軍隊の不思議な体験、あの世へ行った話、火の玉の話など多くの人々に語り継がれた民話を根拠がないからと馬鹿にしたり軽視することは間違っている。その話に秘められた豊かな奥深い世界に耳を傾けてみよう。中高年世代なら、豊富な人生経験からもっと多くの民話を抱いていることだろう。
 日本プロ野球のコミッショナー川島廣守さん(八一)。警察官僚、内閣官房副長官などさまざまな要職を歴任し、現在よわい八十歳を超えてなお、プロ野球界の重鎮を務めるその活力には目を見張るものがある。川島さんは、「人生は生・老・病・死の旅だ」と人生哲学を紹介。あわせて定年世代に向け、自らの健康の秘けつを語った。
日本プロ野球コミッショナー
川島廣守さん
 川島さんの一日は、自宅近くの神社を二十分かけて散歩することから始まる。雨の日でも風の日でもこの日課は欠かさない。そして会う人には必ず自分からあいさつをする。「十人に声をかけて三、四人が挨拶してくれればその日は一日中さわやかな気分だね」と笑顔で話す。
健康面については人一倍注意を払っており、「人間の体で一番衰えるのは脳」と指摘する。使わなければ衰えるのが自然の摂理。そのため普段の生活でも、どうやったら脳が使われるか手立てをいつも、考えている。
 脳の神経回路が足の運動から二十五�、顎から五十�刺激を受けると聞き、それらを使うことに努めているという。例えば毎日四、五通 は手紙を書く。返事は必ず自ら筆を握る。「人間の体は」どれも使われたいと思っている。使うために手や足があるのだから」。年齢に甘えることなく、できることは全て自分で行っているという。
川島さんは今の日本文化の衰退についても意見する。強い危機感を持っているからだ。例えば、小学校六年間で習う日本の唱歌は現在十六曲、国語の時間も戦前に比べ半分以下に減っているという。これでは日本の情緒や文化も衰退すると強く指摘。「日本人としての風土、文化をもっと大切にしてほしい」と川島さんは警鐘を鳴らす。
話は日本人メジャーリーガーにも及ぶ。「松井選手やイチロー選手にも日本人としての魂を胸に強く持ち、日本野球のレベルの高さを世界で実証してほしい」と日本人の誇りをあらためて強調。力強くエールを送った。