ターコイズブルーの鮮やかな色のセーターがひきたつ。「気持ちが明るくなる」と中村さん
 スタートから間もなく2年を迎える、ワコールの高齢者用親切設計下着「らくラクパートナー」。加齢と共に変化する女性の身体に合わせた、快適な着心地とちょっとした配慮が、多くの女性から支持されている。シリーズのデザインを手がける、グッドエイジ営業部企画担当専任課長の中村頼子さん(58=滋賀県)に、下着作りに込めた思いと展望を聞いた。
 先日、電車で外国人の若い女性から初めて席を譲られ、かなりショックを受けたという中村さん。ワコールに入社した20代の頃、60代は”お年寄り”だと思っていたが、自分がその年齢に近づいてきた今、心も体も「全然違うやん」と思う。
 そんな中村さんが2年前、「らくラクパートナー」の企画担当デザイナーとして現職に移った時、まず、”高齢者への固定観念を払拭しなければ”と感じる出来事があった。母親と買い物に行った時のことだ。当時80歳だった母が選んだのはあずき色のセーターだった。それまでなら、ベージュやグレーなどを勧めたかもしれないが、母の「きれいな色を着たい」という言葉に納得し共感した。
 同社では、商品開発のため、京都市と大阪府高槻市にある2つの老人ホームと契約し、主に70代〜80代のモニター調査を行っている。その老人ホームへパジャマを持って行った時のこと。その日はピンクとサックスブルーの2色だったが、好評なのはサックスブルーで、ピンクが残ってしまった。「あるおばあさんに試着をお願いしたのですが、『こんな派手なん?』と戸惑ってらっしゃる。さらに聞くと『ピンクなんか着たら、甥っ子に色気づいたと思われる』と言わはったんです」
 ハッとした。この世代は周りからどう見られているかという意識が強いのだ。この意識を周りから変えなくては─。元気で個性あふれるシニア女性が増えるためには作り手が女性の個性を表現できるような色や柄を提供していくのと同時に、「周りの人も『いつもきれいでいてね』という声をかけてほしいですね」という。
 中村さんは60歳はまだまだ元気でいられるという自信があるが、70歳の自分は想像できないという。元気でいられるかどうか、不安の方が大きい。そのうえ介護保険、年金制度、少子化問題なども追い討ちをかける。独身の中村さんは、将来、第三者に介護をしてもらわなければならない立場になる。そう考えると「自分のことはできるだけ自分で。歳を重ねても、どこか不自由になっても、自力で着られる下着や洋服作りの足がかりをつけておきたい」。そんな思いで取り組んでいる。
自身の老後にも備え
 試作品を手に施設へ通いながら思うこと。それは本人が良くなろうとする意識を損なうことなく、顔を洗う、食べる、着替えるという生きるための基本を自分でやろうという意欲を持たせることの大切さだ。ある人は「人間、歩かんようになったら終わりや」と言いながら、毎日ステッキを持ち、廊下を何回も歩いていた。そういう意識のある人にパジャマやインナーを試着してもらうと、最初はマジックテープだったのに、ボタンが留められるようになったという話をよく聞く。「そんな喜びの声をもらった時は涙が出るほど嬉しい」という。
 昨秋の発売以来人気の「股関節サポートガードル」は自信作だ。立ち上がりや歩行時の足運びの安定感、腹部は圧迫感がなく、股関節をしっかりサポート、着脱を楽にした。ガードルをつける習慣のなかった世代から「こんなに気持ち良いものだったんやねぇ」という言葉はうれしかった。
 次の目標は失禁用の「吸収ショーツ」。初夏の発売を目指して目下、試行錯誤を重ねている。「高齢者の体の機能低下、体型変化のことはまだまだ未知の世界。でも次の世代に引き継ぐための下準備だけはしておきたい」と語った。
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