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「写真は?ここですか、こうですか」とテキパキとポーズをとってくれる小沢さん。いつものおとぼけ“小沢節”はどこへやら。
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新劇、映画、テレビ、ラジオなどで、幅広く活動を続ける俳優・小沢昭一さん(74)は、数年前から、童謡ならぬ「老謡」を歌い始めた。おじいさんが歌うから「老謡」。自らそう名付け、次々とCDを出す一方、2月には雑学大賞も受賞し、今月から明治村村長も兼ねるなど元気いっぱい。少年時代、仕事、趣味を通じて、“今を生きる”喜びと切なさを伺った。
「おじいさんが頑張っているなという別種な味があるんでしょうかねぇ」。発売中のCDには童謡から懐かしい流行歌まで40〜50曲を収録しており、評判がいい。「歌うと元気が出て、僕自身が明るくなれるんです」と言う小沢さん。子供のころの思い出と重なるというよりは、子供に帰れることがうれしくて楽しくて、レコーディングを続けている。
少年時代と重なる昭和10年代ごろまでの歌は何でも好きだが、特に「箱根八里」のような明るい歌が好みだ。ディック・ミネ、藤山一郎らのファンでもある。「小学生のころから恋の歌は大好きで、歌詞の意味も研究しましたよ(笑)。先生に怒られるなんてことはなく、掃除時間には一緒になって、♪あ〜 それなのに それなのに〜と、はたきをかけながら歌っていましたね」。昔の流行歌ははやっている期間が長く、今と違って老若男女が一緒に歌えたものだった。
一方、童謡は「実は大人の歌」だという。例えば、「夕焼け小焼け」の2番。「子供が帰った後からは 丸い大きなお月様…」と続くが、子供が帰った後のことを、子供が歌うわけがない。大人の歌だからこそ、“おじいさん”の心に染み入る。世の中からなくなったものが、童謡の中にはたくさんあるが、「昔を思い出すことでも、童謡を広めようということでもなく、童心に帰れるから歌うんです」
俳優であり、歌手や大衆芸能研究家でもある小沢さんには、仕事へのある思いがある。それは「今日を生きる、今をこの時を生きる」ということだ。「この世界には定年はないでしょ。その代わり、この仕事を始めた時からリストラに遭っているようなもので、何の保障もないんです。だから、スタンスは芸者さんと同じ。声が掛かったところへ出掛けていくんです」。ただちょっとわがままで、できることは喜んで引き受けるが、できないことは断る。好きなことをやっているように見られるが、「頂いたお仕事を端から一生懸命やるだけ」
取材中、何度も口にした「一生懸命」。おそらく、小沢さんの場合は「一所懸命」なのだろう。しゃべることも書くことも、その場その時に熱情を込めて集中するだけに、終わればどんどん忘れていく。「今を懸命に生きれば、明日は明日の風が吹くと思っていますからね」。32年目になるラジオ番組「小沢昭一の小沢昭一的こころ」についても、それは同じだと笑う。
他方、趣味の世界では、永六輔氏らとともに俳句の会を結成している。「笑いが大好きだから、川柳寄りの俳句かも」。翌日が俳句の集まりだという小沢さんが披露してくれたのは、「かさぶたを結局はがす春愁い」。あまり深刻ではなく、ふっと心に浮かぶような何気ない心配事を指す「春愁い」だが、前日、お風呂でかさぶたをはがしてしまったという実体験から生まれた句だという。「明日の句会が楽しみ」と笑いながら、不意にしんみりとした声になった。
「寂しいですよ、本当に。仲間や尊敬する先輩がみんないなくなるんですから。この寂しさ、孤独感が、毎日体にひたひたと打ち寄せてきます。フランキーはいない、西村晃はいない、渥美清もいない…」。お世話になった戸板康二先生も、尾崎宏次先生も、吉行淳之介先輩もこの世にはいない。「若いころは長生きをしたかったし、ありがたいことだと思っていたけれど、長生きすればするほど、友や知人を失っていくんだと年を取ってから気付きましたねぇ」。友があり、先輩があって、自分があった。それなのに、仲間は次々と旅立っていく。
小沢さんは、その現実への孤独感を隠そうとはしなかった。「スタートからリストラで鍛えられてきた男にさえこたえる切なさだなぁ」と。
「明治村」村長に就任
先月末、「明治村」(愛知県犬山市)の3代目村長に就任した。「心から尊敬する徳川夢声さん、森繁久弥さんという2人の後だから、喜んでやらせていただきます」。明治時代は両親の時代だ。写真館を経営していた父が修業を積んだ新潟県上越市の小熊写真館も、明治村に保存されている。父はその後、東京・蒲田に師の写真館に似た木造西洋館を見つけ、開業。小沢さんもそこで育った。
ガス灯の明かりのようにしっとりとした明治の時代と、毎日、「勉強しろ」と怒鳴られた思い出がよみがえる。
◇「小沢昭一百景(全6巻)随筆随談選集」(晶文社刊・各2520円税込み)も発売中。
◆「早稲田大学芸術功労者表彰記念小沢昭一展」
10日(土)〜5月14日(金)まで早稲田大学演劇博物館で。同大学が、文学者・芸術家で功績のあった同大学出身者を表彰し、記念展示を行うもの。今春、小沢昭一氏は、篠田正浩氏(映画監督)らとともに表彰された。