「冬のソナタ」をずっと見ている。「恋愛を追究しているのが面白い」という冨士眞奈美さん

 ドラマやバラエティー番組で活躍中の、女優・冨士眞奈美さんは、10月11日の「体育の日」にオペラとスポーツをテーマにしたコンサート「音楽とスポーツの妙なる調和」に出演する。野球やオペラに詳しい冨士さんだが、俳句も含めて趣味を極め、その知的で活動的な姿が“定年世代”の模範的存在として支持を集める。いつもは明るい冨士さんが戦時中の話や親友の死、そして自分を変えた俳句や“定年世代への提言”などを語った。
 「今日も大リーグの試合から目が離せなかったのよ」と開口一番興奮する冨士さんは、ニューヨーク・ヤンキースの松井秀喜選手の大ファン。野球好きで知られるが、スポーツ全般が大好きで、夜中も衛星中継を見ている。「この夏はオリンピックがあるから寝ていられないわね」
 ご自身はというと「テニスもダンベル体操もしたけど、熱中し過ぎて体をおかしくしてしまった」ほど。今は通信販売で買ったエクササイズ用のバイクを1日平均20〜30分こいでいる。「米やめん類など炭水化物をやめているの」とダイエットにもいそしむが、子供のころは好き嫌いが激しいのと、戦時中の物資不足の影響から栄養失調でガリガリにやせていたという。
 冨士さんは幼少期を静岡県清水村(当時)で過ごしたが、実家は農家ではないため終戦直後は食糧不足に苦しんだ。
 「親しい仲でも、食糧を分けてくれなかったんですって。イタドリやグミ、スカンポなど道に生えている野草を取って食べたり、ノビルやツクシを摘んで母に煮てもらって食べたり。食べ物は粗末にできない。だから今もロケ弁のふたについたご飯粒も取って食べちゃう」
 今年も8月15日が近づく。「私の周りでは戦争の被害が少なかったけれど、隣の沼津市に焼夷(しょうい)弾が雨のように降っていたのを母と抱き合って見ていた。空が真っ赤に燃えて、地獄のようだったわ」。学校の帰り道に機銃掃射にあったという恐ろしい話も聞いた。

「俳句をやっている男の人って、花の名前をよく知っていてすてき」と、行きつけの花屋の前で

“自分を大事に俳句から”
 つらい体験といえば昨年11月、親友で女優の小林千登勢さんを多発性骨髄腫で亡くしたことだろう。66歳と早い死だった。「ショックだった。その前にテレビ番組で2回も一緒に旅行したのに、病気のことは何も言ってくれなかったのよ」。一緒に温泉に入っていた時、小林さんが不意に「俳句を教えて」と言い出した。「うれしくて、『西瓜』『踊』『八月』など出題もして、入門書まで買っていたのに…。今思えば千登勢は治る希望を持っていたのだと思う。1人でお風呂に入っている時、『もっと一緒に旅にも行けたのに』と彼女を思い出してしんみりしちゃうの。健康は過信してはだめよ、と教えてくれたのね」
 「でも、その人のことを思うとホクホクしちゃう友だちがいるから幸せ」と笑顔を見せる。野球ファン同士で俳句仲間のねじめ正一さん、俳優の先輩で句友の小沢昭一さん、そしておなじみの吉行和子さんや岸田今日子さんたちと俳句をしていると、「この時を大切にしよう」と思うという。
 「俳句は5・7・5という短い文字数の中に、自分の信条や人生を自然と合体させ、言葉を尽くして表現する。気持ちを字に表わしていると自分をまっすぐ見つめることができる。すると自分を粗末にしてきたな、と感じてくるの」。「かごの鳥」だったという結婚生活10年間も含めて、以前は人の顔色ばかり見てきた。しかし離婚を経て、自由と友だちがどれだけ大切か分かった。そして俳句を作るようになってから自分を大事に思うようになった。自分を大事にするということは他人も大事にすること。1人でもみんなでも楽しめる趣味を見つけてよかったという。
 「付き合いを深くするためにも、自分とはこういう人間なんだということをはっきり相手に伝えることが大切ね」。定年世代の男性には、「言わなくても分かるだろう」と考える人が多いが、「ご苦労さん」と奥さんに言葉を尽くしてあげないと人生の最後の峠に来ていたわり合うことができない、と冨士さんは言う。「定年前からの意識改革を勧めます」
 また定年世代に向けて、「子供の趣味だから、親の趣味だからと背を向け合わないほうがいい」という。冨士さんは娘りずさんのロックバンドのライブにも行くし、りずさんは俳句もオペラも好き。「柔軟性を持って、相手の趣味に入っていくことが大切。ロックはよく分からないけど、自然と体が乗っちゃう。娘の書いた歌詞を読むと、こんなこと考えていたんだなって分かるし」
 自分にとって本当に大切なものを知り、年齢にとらわれず柔軟性をもって活動する。それが魅力につながっているのかもしれない。「女優は年齢制限がないからとってもいい仕事」という冨士さん。「趣味も兼ねた仕事を、これからもずっと楽しみながら続けていけたらいいな」
【音楽とスポーツの妙なる調和】
 10月11日(月・祝)午後2時から東京オペラシティコンサートホール(京王新線初台駅徒歩1分)で開催。
 体育の日にちなんで、冨士眞奈美さんによる音楽とスポーツに通ずる感動をテーマとした楽しいトークや、オペラの名曲を紹介する。
 ソプラノの関定子とテノールの金永煥(キムヨンファン)が、プッチーニ作曲のオペラ「トスカ」から「歌に生き、恋に生き」などを披露。特別ゲストに歌手としても活躍中の元前頭三枚目力士の大至伸行。
 S席7000円〜B席4500円。TEL03・5388・9990