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「昔から英米文学に強く引かれるものがありました」と若尾さん
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日本映画がもっとも盛んだった時代に新進スターとして数多くの作品に出演した若尾文子さん(71)。「浮草」「妻は告白する」「雁の寺」など主演作はゆうに180本を越える。1970年には川端康成の「雪国」で舞台初出演を果たし、以来、舞台を中心に活躍している。9月4日(土)からル テアトル銀座で上演される「ウェストサイドワルツ」では、長いキャリアの中で初めての翻訳劇に挑戦するとあって、話題を呼んでいる。
若尾さんが今回演じるのは、ニューヨーク・ウエストサイドのアパートに住む元ピアノ教師マーガレット・メアリー。メアリーの部屋には彼女を慕う50代で独身のバイオリニストのカラと、メアリーの新しいルームメートになった女優志望のロビンが集い、これまでの出会いや結婚、離婚、都会の孤独を語り合う。生きてきた時代背景の違う3世代の3人の女性たちが、互いの人生を振り返り、見つめ直しながら明日への希望を見いだしていくハートフルな舞台だ。
脚本は、映画「黄昏」などで知られるアメリカの人気劇作家アーネスト・トンプソン。81年にキャサリン・ヘプバーンがメアリー役で公演している。
若尾さんといえば日本映画の印象が強いが、翻訳劇をずっとやりたいと思っていたという。「なぜかこれまで縁がありませんでしたが、昔から英米文学に強く引かれるものがありました」
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「ウェストサイドワルツ」に出演する若尾文子(中)と寿ひずる(左)、浅野温子(右)
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文学少女から女優へ
若尾さんは10代のほとんどを宮城県仙台市で過ごした。その時に毎日毎日図書館に通っていたという。もともとは東京生まれだが、戦争中に仙台に疎開し、そこで終戦を迎えた。「焼ける前の仙台をとてもよく覚えています」。仙台では母と兄を亡くしている。戦争が終わった後も、父親の仕事の都合もあって、父親と末娘の若尾さんだけが仙台に残ることになった。
「母が亡くならなければ図書館に通うことはなかったかもしれません。図書館は1人でいられる場所として最適でしょ。アメリカ文学、ロシア文学、明治文学など全集を片っ端から読んだわね。手に入る限り読まないと気が済まないの。なかでも一番イギリス文学が好きでした」
映画館にも通い詰めていたという。もちろん学校からは禁止されていた。
「絶対に行っちゃいけないんだけど内緒で行きましたよ。『ハムレット』なんて4回も見ました。ローレンス・オリビエが素晴らしくて、人をこんなに感動させることができるなんて素晴らしいなぁと思いました」
それが女優になりたいと思ったきっかけだったかもしれない、と振り返る。図書館に通っていた少女時代が今に至るまでの大きな土台となっている、とも。「演技で他人になることは、本を読むことの延長みたいなもの」ととらえている。
これまでに数多くの作品に出演したが、昔から役作りには時間をかける。今回の舞台ではピアニストという役柄のため、公演の数カ月前からピアノの練習も行った。
「もちろん逆立ちしたって弾けるようにはなりませんよ。でも弾けるように見せなくちゃいけないし、合奏をする勘が付いてきました。私は1度にぱっぱとできるわけじゃないから、できるだけ時間をかけて少しずつ少しずつ自然発酵してくれるのを待っているの」と、若尾流の役作りについて話す。
デビューしてからことしで52年。作家・三島由紀夫が「人はその氷イチゴみたいな(ほっとするような)味覚に勝てない」と褒めちぎった魅力は今も変わらない。ピンクのツーピースをさらりと着こなし、インタビュー中、姿勢を決して崩さなかった。
「年を取ることは体力的にはマイナスでしかありませんが、それをマイナスに考えるか、プラスに持っていくか、その人の考え方によって大きく違うのではないでしょうか。人間は死ぬまで生きているわけだから、充実させるかどうかはやっぱり本人次第ですね」
その点でメアリーを見習いたい、と言う。
「彼女は奥行きが深く、懐が広い人。すべてを受け止めて前進しようとし、偏見がなく、与えることができる女性です。どの世代の方にも共感して見ていただけると思います」