|
|
|
|
|
| 「好奇心、自然へのあこがれ、冒険心が、60歳を超えても失われていなかったことがうれしい」と語る岡本さん |
還暦を迎えた2001(平成13)年夏、横浜市港北区在住の岡本孝之さん(64)は、カナディアンロッキーの外周約3000キロを、たった1人、自転車で走破した。「あきらめていた夢をもう一度思い出してもらい、自分の体験が中高年の人たちの背中を押してあげられれば」と、道中の悲喜こもごもをつづった旅行記を4月に出版した。
大学卒業後、自動車会社に勤務していた岡本さんは、「足腰が弱くならないように」と、50歳を過ぎて、週末、サイクリングをし始めた。自然や歴史遺産、文化、そして世界の人々と交流したいという岡本さんの情熱は、定年を目前に控えてさらに強くなっていった。普段から特別に鍛えていたわけではなく、体力に自信は無かったが、ロッキー山脈単身自転車走破を決意。家族を説得し、2001年5月31日に日本を出発した。
カナダ・バンクーバーで地図や食料、マウンテンバイクを調達し、6月3日、岡本さんはペダルをこぎ出した。
「知らない土地を2人で走る不安、恐怖心、寂しさでいっぱいでした。でも、途中でリタイアしてもいいから、とにかく行ける所まで行ってみようと思った」
最高で標高約2500メートルの道のりには、さまざまな出来事が岡本さんを待ち受けていた。走り出してすぐ、自転車通行禁止の橋を強行突入したところを警察に止められて厳重注意を受けたこと、子連れクマに遭遇し、猛スピードで逃げたこと、総重量45キロの愛車を押して、長い山道を上ったこと…。風雨にさらされながらもリタイアせず、過酷な旅をマイペースに続けられたのは、「雄大な自然、美しい街並み、そして現地の人々との触れ合いがあったから」。キャンプ場で知り合ったカナダ人夫婦の自宅に5日間お世話になるなど、その厚い人情は岡本さんにエネルギーを与えた。
1日の走行距離は平均90キロ。最高で160キロも走り続けたこともあった。一番気を使ったのは健康管理。「1日の疲れを十分にとり、無理をしない。野菜は多く取りました」。野宿、洗濯、食事もすべて初めての経験。「ご飯を炊くのは慣れました。今では妻よりうまいんじゃないかな」
約2カ月間のカナディアンロッキー1周の旅。その後も、アメリカ、オーストラリアなど毎年海外サイクリングへ出掛けている。合間を縫って、思い出を日記風につづった「カナディアンロッキー・一周の旅〜60歳で挑戦、3000キロサイクリング」(日本文学館・1365円)=写真=を4月に出版した。「若いころの夢にチャレンジしたいけれど、決断がつかないという中高年は多いのではないでしょうか。でもね、意外にできるもの。年齢による衰えはありますが、体はすぐに慣れます。60歳を過ぎてからでも遅くない」
岡本さんは日々の生活に自動車は使わない。買い物や鎌倉への墓参りはもっぱら自転車だ。週2回はジムに通い、月1、2回は趣味のサッカーで体を動かす。
来年1月からはニュージーランドを回る予定。「2006年はサッカーワールドカップを見に、自転車でドイツに行きたい」
岡本さんの夢は際限なく広がる。 |
|
|