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遠藤 英嗣さん |
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「自筆証書」と「公正証書」
代表的な2つを比較
「サラリーマン、退職金だめなら、親の遺産相続」といわれるように、年金など社会保障制度が少子化でゆらぐ中、遺産相続への期待度も高まってきそうだ。遺産相続が遺産“争族”にならないためにどう遺言書を作成すればよいのか。
蒲田公証役場の遠藤英嗣公証人が「特に遺言を残しておくべき」としてあげるのは次の4つのケース。それは、(1)夫婦に子供がいない場合②相続人同士が不仲または疎遠な時(2)相続人以外の人に財産を分けてやりたい時(3)相続人がまったくいない場合―である。
自筆 全て自分で
公正 専門家が作成
遺言書には代表的なものとして自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類がある。
このうち自筆証書遺言は全文を自分で書き作成の日付を記入して書名押印するため費用はほとんどかからないが、厳格な方式が定められており、方式どおり作成するのは非常な困難が伴う。そして、内容が法律的に不備な場合には遺言が無効になることもある。
さらに遺言者の死亡後、家庭裁判所で遺言書の検分を受ける(検認手続き)際、⑴申立書⑵申立人・相続人全員の戸籍謄本各1通⑶遺言者の戸籍(除籍・改製原戸籍)および出生時から死亡までのすべての戸籍謄本各1通⑷遺言書の写し(遺言書が開封されている場合)をそろえて差し出す必要があり、手間がかかるのが難点。
これに対し公正証書遺言は、公証人が遺言する人から聞いた内容を記載して作成する。手数料【別表】はかかるが、都内の東京法務局所属の公証役場ならどこでも利用可能だ。
公証人とは裁判官や検察官、法務局長など法律実務に長年携わり、法務大臣から任命された法律の専門家なので、遺言書の法律的な不備やその効力が後日争われるようなことは少ない。遺言公正証書の原本は公証役場で半永久的に保管され、紛失や内容を書き換えられるおそれはなく、家裁の検認手続きも不要だ。また、病気で公証役場に行けない場合も病院や自宅に公証人が出張して作成することも可能で、口のきけない人は筆談で、耳の聞こえない人も通訳人を通じて意思を伝えることで公正証書遺言ができる。
急な出費も念頭に
公正証書遺言は証人2人の立ち会いが必要だが、適当な証人がいない場合は公証役場でふさわしい人をあっせんしてくれる。
「公正証書遺言は、不動産の移転登記や預貯金の払い戻し・名義変更が遺言状でできるので、お葬式など急な出費の時に有利です」と遠藤公証人は話す。
遺言書を作成する場合は両方の長短を比較して、自分にあった方法を選ぶことが必要だ。
【別表】
相続・遺贈する財産 |
100万円まで |
200万円まで |
500万円まで |
1,000万円まで |
3,000万円まで |
5,000万円まで |
1億円まで |
手数料 |
5,000円 |
7,000円 |
11,000円 |
17,000円 |
23,000円 |
29,000円 |
43,000円 |
(平成20年1月1日現在)
問い合わせ先
蒲田公証役場 TEL:03-3738-3329 |
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