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子どもいない夫婦の一方が亡くなった時に遺産の一部が亡くなった配偶者の兄弟姉妹に相続されることを知らない人は多い。今回は、夫の母の世話を見てきた妻が遺言書がないばかりに自宅を出ることになったケースを紹介する。
「夫の母と同居して世話をしていた妻は、夫とその母が相次いで死亡したため、夫婦で築いた財産の一部を夫の弟である二男が相続することになり、住んでいた家にも住めなくなった」
夫が亡くなってから一人で生活していたAさん(88)は体が弱ってきたこともあって長男夫婦と同居することになった。長男のBさん(62)と妻のC子さん(58)には子どもがおらず、Bさんは定年後も嘱託として長年務めてきた会社で仕事を続けていた。Aさんは実の母のように世話をしてくれるC子さんに日ごろから感謝していた。
そうした中、Bさんが病気で亡くなり、夫の遺産(自宅と預貯金など)は母と妻がそれぞれ3分の1と3分の2ずつ相続することになった。義母はいつも世話になっている嫁に恩義を感じ、「わたしの分はあなたにあげるから要らない」と言ってくれた。
ところが、夫の4カ月後に義母も死亡してしまった。遺言書を書いてなかったため、義母がC子さんにあげる、と言っていた夫の遺産の3分の1は二男Dさん(60)が相続することになってしまったのである。
夫と築いた自宅や預貯金の3分の1がこれまであまりつき合いのなかったDさんに行くことになり、遺産分割協議でDさんが不動産を強く要求したためC子さんは夫名義だった自宅にも住めなくなってしまったのである。
遠藤英嗣公証人は義母のAさんは世話をしてくれたC子さんに「全部やるよ」と書いた遺言書を残すべきでした。あるいは(長男Bさんが死亡した時に)Aさんが相続を放棄してすべてをC子さんにあげておけばよかった」と話す。東京法務局所属蒲田公証役場TEL:03-3738-3329 |
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