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シニアパワー発揮で、経済停滞脱却へ 野村総研・谷川史郎さんに聞く |
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「景気がいいとか悪いとかいうのもせいぜい1%の差。日本がちょっと元気になるのも少しの消費拡大があればいい」と谷川さん |
個人資産に注目
「失われた20年」といわれる経済停滞からなかなか脱却できない日本—。そうした中で昨年、東日本大震災が起こり大きなダメージを受け、その痛手からまだ、十分立ち直っていない。「そんな日本の現状を打開させる“パワー”を持っている」とシニア世代に期待するのが、野村総合研究所取締役専務執行役員の谷川史郎さん(55)。「高齢者が中心となって内需を拡大していけば日本は再び成長できる」と話す。
谷川さんが期待するシニアの“パワー”とは具体的に何を指しているのか。それは金(金融資産)と力(選挙投票)のことだという。1300兆円を超えるといわれる日本の個人金融資産。このうち約60%を保有するのが60歳以上のシニアたち。また、選挙で投票する人の約60%を50歳以上が占めるという。こうした現状から、谷川さんは日本における“パワー”の中心はシニアにある、と指摘する。
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内需拡大の主役に
谷川さんが日本経済の一番の問題点として挙げるのが内需不足。その内需を盛り上げる方法としてシニアの購買力に注目する。
ただ、シニア側からは「消費を増やせと言われても欲しいものがない」という答えが返ってきそうだが…。「たとえば、つえなどの代わりに人の筋力を増強するために着用する自助ロボットスーツの購入や、価格は少々高くなるが自然栽培・採取した国内の農産物を購入するなどを考えてみては」と谷川さんは提案する。野村総研の試算では自助ロボット産業を新産業として育成すると20万人の雇用創出になるし、食料自給率が現状の40%から50%に10ポイント上がると、これも20万人の雇用創出につながるという。
「お金が回り始めると新しい産業が起こって新たな雇用が生まれる。このことを信じて行動してみては」とシニアの消費活動を活発化させることを提案する。
生前贈与も一案
さらに、思い切って孫と同世代の若い人たちへ起業のための資金を提供してみることも選択肢としてあるのでは、とシニア世代に問いかける。
「こうした“生きたお金”の使い方をすれば日本経済は活性化されるが、現状は逆」と谷川さん。その典型的なケースが遺産相続だという。日本では、年間約50兆円もの遺産相続が行われているが、「たとえば80代の親から60代の子へと遺産が相続されても、貯蓄されるだけで消費には回らない可能性が高い。これではお金が生きてこない」と話す。
60代以上が保有する金融資産の1%で7兆円超の規模となるが、これが30代以下の若手世代に生前贈与されると、国内消費が約5兆円規模で刺激されると指摘する。
シニアの消費拡大が起爆剤となって日本経済が活性化されるまでの残された時間は団塊世代が75歳から上の後期高齢者となる2025年まで、と谷川さんは予想する。昨年の大震災以降、「絆」の意識が社会の中で高まりをみせるなど日本の変化の兆しは出ている。それにどうやって勢いをつけることができるかが課題だ。「シニアが日本を変えようと思うか、そう思わないかの差はこれからの日本にとって大きな影響を及ぼす」と話す。 |
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