|
|
映画「参勤交代」から考える現代の経済 脚本家の土橋章宏さん |
|
|
|
日立でエンジニアとして勤務していた土橋さん。退職後、WEB制作会社を立ち上げる一方、脚本や小説を書いている。「超高速! 参勤交代」は、有能な脚本家育成を目的に制定された木戸賞を受賞。歴代最高得点という高評価だった |
「庶民の経済」には恩恵も
幕府の陰謀に翻弄(ほんろう)される1万5000石の小藩、湯長谷藩(現・福島県いわき市)を舞台にした歴史エンターテインメント映画「超高速! 参勤交代」が21日から全国公開される。1635(寛永12)年、3代将軍・徳川家光の時代に制度化され、諸藩の財政を疲弊させることが目的といわれる参勤交代。同作品の脚本を書いた土橋章宏さん(44)は、「参勤交代によって強者から弱者へお金を還元させるシステムが働き、庶民の経済が栄えました」と話し、現代でも、「富裕層から庶民にお金が回るようなシステムづくりは可能なのでは」と指摘する。
物語は、8代将軍吉宗の時代。1万5000石の小藩、湯長谷藩に存在するという金山略奪を狙って無理難題を押し付ける幕府老中。果たしたばかりというのに、再び5日以内に参勤交代して江戸城登城を命じる。通常なら準備に半年、道のりに8日はかかる。しかも、参勤交代が終わったばかりで蓄えも尽きている。とはいえ、命じられた日までに登城しなければ藩が取りつぶされるとあって、貧乏小藩は知恵を絞って参勤交代を果たそうとするのだが…。
震災後、福島を訪問
「湯長谷藩というのは幕末まで続いた藩で、代々名君が出て百姓一揆が1回も起こらなかったんです」と土橋さんは話す。映画の脚本を書くのに際して、東日本大震災とその影響による福島原子力発電所の事故に苦しむ福島を訪れた土橋さん。その時、「“先祖”の侍たちが幕府の無理難題にもひるまなかったという姿を見て福島の人たちはスカッとするのではないか」と思い、湯長谷藩を舞台にすることに決めたという。
参勤交代は1年おきに諸大名に江戸と国元を往復させ、将軍への忠誠を示させる制度。行きが参勤、帰りが交代。大名の妻子を人質として江戸に住まわせるとともに参勤した大名も1年間江戸に滞在しなければならず、その財政負担も諸藩にとって大きかったという。
例えば、石高が100万石といわれた加賀藩(金沢)では13〜15日かけて参勤したが、1晩の宿泊代だけで今のお金で3000万円以上、すべての諸経費を合わせると13日間で5億円以上かかったといわれる。
大名にとって莫大(ばくだい)な負担に苦しんだ参勤交代だが、それに伴い、五街道など街道や宿場の整備が進み、江戸の文化が地方に伝えられるというよい影響もあった。
土橋さんは、「参勤交代は諸大名にお金を使わせて庶民に還元させるという面もありました」と指摘する。「参勤交代の間に大名が各宿場で使ったお金は庶民を経済的に潤しました。今でいうと公共事業のような経済的効果を生んでいたのではないでしょうか」。また、街道が発達したことで江戸と地方の文化交流が活発になって、江戸のファッションをまねしようと地方でも着物が多く売れたり、おみやげとして浮世絵が人気を集めたりと、需要が喚起された面も大きいという。
現代の政策のヒントに
大きな経済効果を生んだ参勤交代。その知恵を現代に生かすことはできるのだろうか。土橋さんは、「政府が、富裕層から庶民にお金を還元させるような仕組みづくりにアイデアを絞るべきでは」と話す。
例えば、「庶民のために面白いイベントを行った企業には税制を優遇するなどのメリットを与えれば、イベントをやるところも出てくるのでは」と提案する。「要は、文化を栄えさせて庶民の活力を引き出すことです。活力があるところにお金をまけばみんなお金を使うようになります。活力がなければお金をまいても使わずに貯金しようとなってしまうでしょう」と土橋さん。江戸時代に学ぶべきことは多いようだ。 |
©2014「超高速! 参勤交代」製作委員会
|
歴史エンタメ映画「超高速! 参勤交代」21日公開
監督:本木克英、脚本:土橋章宏、出演:佐々木蔵之介、深田恭子、伊原剛志、西村雅彦ほか。119分。日本映画。
21日(土)からTOHOシネマズ日本橋(Tel.050・6868・5060)ほかで全国公開。 |
|
| |
|