旅の情報
京都駅からJR湖西線新快速で45分。滋賀県北西部にある高島市新旭町は、人と自然が共生する「水の郷」だ。比良山系の伏流水がわき水となり、それを利用した居住敷地内水場「かばた(川端)」は、人だけでなく魚や植物が息づく場所。水路・川・琵琶湖―。あらゆる命が循環する独自のエコ文化がこの里山に根付いていた。
「里山水辺ツアー」はこれからの季節に最適だ。生水(しょうず)と呼ばれる清浄なわき水が豊富な新旭町・針江地区。集落にはりめぐらした水路をたどる旅は、涼しげでどこか懐かしいふるさとの景色を感じさせる。
左はガイドの美濃部武彦さん。テレビ放映された田中三五郎さんの船着場で
かばたに放流されたコイが鍋や食器の洗いカスを食べて水を浄化
かばたとは元池(わく所)・壺池(ためる所)・端池(魚がすむ所)の総称。生水を利用した井戸端の水は、平均12〜13度と、夏は冷たく冬は温かい。飲み水・洗いものに加えて、野菜や果物の保冷にと、使いみちはさまざまだ。
この地域の関心が高まったのは、2004年にNHKで「映像誌:里山『命めぐる水辺』」が放映されて以降。「ふるさとの暮らしぶりを体験したい」という問い合わせが増えるのに伴い、「針江生水の郷委員会」を設置。同年4月から、地元ボランティアによるガイドツアーが始まった。
かばたを伝い、水路に沿って歩いていくと緑鮮やかな梅花藻が群生し、愛玩動物のカモやコイが水路をゆらゆらと泳ぐ。公民館の横では、いくつもの水路が川に注いでいて、子どもたちが魚網を片手に水中の魚を無邪気に追いかけていた。
「嫁ぎ先でしゅうとめがまず教えるのは、かばたと水を大事にしなさいということ」と話すのはボランティアガイドの美濃部武彦さん(61)。集落全体の暮らしが「きれいな水使い」でつながっているようだ。
公民館では、黒米入りのご飯、地元産の野菜の天ぷらと豆腐、子アユの山椒煮にお吸い物。清水地ならではの菱(ひし)の実のお茶をいただいた。「地元で取れたものでおもてなしをする。お客さんに提供しようと張り切ることで地元の人の活力になる」と笑顔で語る美濃部さん。近江商人ならではの人当たりの良さと、もてなしの心にまた訪れたいと心温まった。
◇ツアーは毎月第2・4土曜日、午後零時半からの約3時間、もてなし料理付きで1人2000円(要予約)。 なお、地元「生水の宿」では、かばたを使った自炊体験が楽しめる。
1泊1人3000円〜、要予約。
問い合わせは新旭町観光協会(TEL)0740・25・6464