旅の情報  
 湖上の島「沖島」(滋賀県近江八幡市沖島町)は、周囲六・八キロの中に百四十二世帯、約四百五十人が暮らす小さな島。昭和三十五年の八百八十人をピークにどんどん人口は減少し、現在島民の約四割は六十歳以上。大半が漁業を営んでいる。
●ノラ猫がお出迎え
 沖島漁港で最初に迎えてくれたのは、猫の群れ。横目で観光客をじろりと睨む。「ここは人間よりも猫のほうが多いと、皮肉をいう人もいるんやわ」と語ってくれたのは、近江八幡観光ボランティアガイド協会の西居正吉さん(六九)。島内唯一の観光ガイドだ。「しゃべりが下手やけん、勘弁してや」とおもむろに取り出したのは、カレンダーの裏面 に自分で書いた島に残る文献。西居さんは、最近徐々に増えつつある観光客に、沖島を案内している。
漁船が並ぶ沖島漁港
「釣り客やミニサークルの人たちがよく島を訪れます」とガイドの西居さん

 沖島の歴史は古く、万葉集にも詠まれている。本格的に人が住むようになったのは、保元・平治の乱以後で、源氏の落武者七人(南源吾秀元、小川光成、西居清観入道、北兵部、久田源之丞、中村磐徳、茶谷重右衛門)が切り開き、居住したことが始まりと言われる。現在も島民の九割が彼らの苗字を受け継いでいる

 驚くことに、島内には車が無い。メーンストリートは道幅二メートルと狭く、自転車がすれ違うだけで道がふさがってしまうほど。漁港近くには網やかごが転がり、自転車が整然と並ぶ。洗濯物は歩道に迫り出し、軒先で初老の婦人たちがお茶をすすっていた。どこか懐かしい町並みが続く。
小学校(左)と保育所(右)
●民宿では湖魚料理
 そんな島も公共施設は整い、郵便局、消防艇庫、病院の役割も担う公民館、児童六人の小学校と四人の保育所。かつては中学校の分校もあったそうだが、生徒数も減少し、今はスクールボートに乗って通 学しているという。民宿は二軒。「湖上荘」(TEL0748・33・9639)と「島の宿」(TEL0748・33・9521)では湖魚料理が味わえる。
大きな鍋にワカサギを入れる奥村さん
 「佃煮が出来上がる午後にお邪魔すると、出来立てを試食できるよ」と聞いて訪れたのは、島内唯一の湖魚佃煮店「山甚水産」。毎朝、琵琶湖でとれたウロリ(ゴリ)、小鮎、ワカサギ、川エビ、シジミなど約十種類を無添加、無着色で仕上げる。主人の奥村正次さんが「お袋の味を再現しよう」と始め、現在はインターネット販売
http://www.hottv.ne.jp/~yamajin/)をしており、北海道から沖縄まで直送している。「秘密はショウガと山椒。水あめは一切使わない」と正次さん。シジミをひとつまみ口に入れると柔らかく、風味があった。
 その横で夫人が、店の入口で日向ぼっこをしている野良猫にシジミを食べさせていた。「主人には叱られるんだけれど…内緒ね」と一言。この島だけはゆったりした時間が流れていた。
【旅の案内】JR京都駅から東海道本線新快速で近江八幡駅まで32分。「休暇村 近江八幡」までは車で約30分。沖島へは「休暇村 近江八幡」徒歩15分にある「堀切港」から約2キロ。定期船(10トン17人乗り)が1日10本出ており、約10分で片道400円。
 観光の問い合わせは(社)びわこビジターズビューローTEL077・523・2752