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四万十川の伝統漁法・火振り漁。
8の字に振られるたいまつの
灯りが幻想的だ

 日本最後の清流といわれる四万十川。多くの動植物の命をはぐくみ、人々の生活とともにある澄んだ流れに心引かれ、その下流域・高知県中村市と西土佐村を訪れた。
 四国山地の奥深く、高知県と愛媛県の県境・東津野村の不入山(いらずやま)に源流点を持つ四万十川。あまたの支流を集め、縦横無尽に蛇行を繰り返しながら、全長196キロの大河は中村市で土佐湾に流れ込む。とうとうと流れる四万十川には、あふれんばかりの自然への感謝と畏敬(いけい)の念の中で暮らす人々の姿がある。
人と魚が共存共栄
 そのひとつが、人と魚が共生するための知恵が生かされた伝統漁法。屋形船から川の風情を楽しみながら伝統の技を見学できると聞き、乗船地へ向かった。中村市街から、通称“赤鉄橋”と呼ばれる四万十川橋を渡り、車で走ること約15分、四万十川観光開発(株)の屋形船の起点・山路に到着した。
 河口に向かって、ゆっくりと船が滑り出る。河口から約10キロの間は、海水と川の水が混じり合う汽水域で、四万十川の特徴を生み出している。ほかの河川ではほとんど見られないアカメ(ミノウオ)やクロホシマンジュウダイをはじめ、150種類以上の魚が生息する。その数は全国でもトップで、トンボや野鳥類などと合わせ、たぐいまれな生物の聖域になっている。
 「四万十川はえんぐりかんぐり(曲がりくねり)、上流から河口まで、どこをとっても水が澄んでいてきれい。この恵みがわしらの宝」。船頭の柴岡善数さん(70)が誇らしげに言う。日があるうちに、まず披露してくれたのは「柴漬け漁」。シイやヤマモモなどの枝の束(柴)を一晩川に沈めておき、柴の中に潜んだウナギやエビをタモ網ですくい捕る漁法だ。見事にウナギが掛かっていた。続いては「投網漁」。小船の先に立って10畳ほどもある網を投げ、丸く広がった網で主にアユを捕るという。
 そして辺りが漆黒の闇に包まれたころ、遠くからたいまつの炎がゆっくりと近づいてきた。「火振り漁」だ。小船の上でたいまつを8の字に振り、光から逃げるアユを建網に追い込んでいく。闇に浮かび、迫りくる炎は幻想的で力強い。20分ほどかけて追い詰め、網を引き上げるとアユやボラがもがいていた。かなりの大漁だった。
 アユの漁期は6月中旬から10月中旬。一度禁漁になった後、12月から1月末にかけて再び解禁に。冷たい川に入り、下流で産卵を終えたアユを仕掛け針で釣る「落鮎(おちあゆ)」は、四万十の風物詩のひとつ。そして、11月から4月にかけてはアオノリ漁が行われる。味、色、香りともに日本一との評判が高い。

四万十楽舎の裏手にあるかよう
大橋から見る四万十川と岩間沈下橋
手とり足とり布草履を一緒になって
作ってくれた岡崎亀子さん
(左から3人目)

 さらに、四万十川に欠かせないのが沈下橋。洪水などで橋が破壊されることがないよう、もともと欄干のない橋で、自然に溶け込むような素朴さがこの川にしっくりと似合う。翌日は、幾つもの沈下橋を見ながら、川を上り西土佐村へ。同村にある廃校になった小学校を活用し、平成11年、自然体験型施設として生まれ変わった「四万十楽舎(がくしゃ)」を訪ねた。一歩足を踏み入れると、たちまち子供のころに戻った気分だ。元教室には手作りの2段ベッドがしつらえられ、宿泊室に。50人まで泊まれる。
 ここでは、さまざまな自然体験メニューが用意され、地元のおんちゃん、おばちゃんたちが大活躍しているという。おんちゃんから竹イカダ作り、水鉄砲、丸太乗りなど教えてもらう「おんちゃんコース」をはじめ、イカダ遊び、木工品作り、カヌー、シュノーケリングなどの数あるメニューの中から、布草履作りにチャレンジした。指導してくれたのは、近所に住む岡崎亀子さん(72)。「まず、古布を2〜3センチに破いてくださいねぇ」。その後は足指にビニールひもを掛け、そこに布を絡ませ編み上げていくのだが、なかなか難しい。脱落者が続出する中、ほとんど岡崎さんに頼りながらも、なんとか片足分が完成。「子供のころ、わらじを作っていたから思い出すねぇ」。差し出されたオレンジ色と赤いチェックの草履は、四万十の思い出になった。
 【問い合わせ】中村市商工観光課TEL0880・34・1783、四万十楽舎TEL0880・54・1230