関門海峡に架かる関門橋の優美な姿をバックに、レトロな駅舎や西洋館が建ち並ぶ「門司港レトロ地区」。潮の香りがする門司港のさまざまな魅力を求めて、港から山の手へと散策した。
大正時代の建造物を保存
スタートは門司港駅だ。大正3年(1914)、旧門司駅として開業。クラシカルな雰囲気漂うネオ・ルネッサンス様式の木造は“門”をイメージしているという。西洋建築が建ち並ぶ周辺一帯は、明治から大正期、外国との交易の要衝として栄えた。
一角には、アインシュタイン博士夫妻も宿泊した旧門司三井倶楽部(大正10年)、八角形の塔屋とオレンジ色の外壁を持つ旧大阪商船(大正6年)、旧門司税関(明治45年)、門司電気通信レトロ館(大正13年)などが往時をしのばせるようにたたずむ。
九州初の鉄道ミュージアム
門司港駅から徒歩数分で「九州鉄道記念館」(松本零士名誉館長)に着く。昨年8月にオープンした九州初の本格的な鉄道ミュージアムだ。旧九州鉄道の本社屋(明治24年)を改装した赤れんがの展示本館、ミニ鉄道公園などから成るが、圧巻は中央ゲート脇に一列に並ぶ伝説の車両8台。館長の佐藤正昭さん(56)が順に説明してくれる。
まずは、“キュウロク”の愛称で親しまれ、のちには、その番号から“ごくろうさんよ”とも呼ばれた「59634号」。貴公子とも呼ばれた「C591号」。黒光りする蒸気機関車の迫力に圧倒される。また、戦前の代表的なクラッチ方式気動車「キハ0471号」は、オープン当初、あまりに多くの人が車内見学をしたため、1週間で封鎖し、修理をしたという逸話を持つほどの人気ぶり。直角の木製座席に座ると、往年の旅人気分だ。
クリームの地色に赤のラインが流れる「クハ481―603号」は、特急「にちりん」「かもめ」として使われた車両。「ツラが良いんです」と、佐藤さんもお気に入りの「クハネ581―8号」は、昭和43年に世界初の寝台特急「月光」としてデビュー、最後は普通電車として平成12年まで活躍したそうだ。「平日はシニア世代が昔を懐かしんでいる」という。
なつかしい街並みと料亭
にぎわいを見せる門司港レトロ地区から少し離れた清滝・錦町地区へは「栄町銀天街」を通る。古めかしい看板や、路地奥から漂ってくる懐かしさにタイムスリップしたかのようだ。商店街を抜けると、正面に石垣の上に建つ木造3階建ての建物。「『三宜楼』という元料亭で、2階には100畳もの大広間がありました」と、栄町銀天街理事長の原田松雄さん(68)が説明してくれた。昭和初期、この辺りには200人を超える芸者がいたという。そのせいか、しっとりとした町並みに見えてきた。
「むつみ関門荘」は、そこから程近い坂道の細い路地の途中にある。土谷義一さん(67)、清子さん(62)夫妻が笑顔で迎えてくれた。元料亭だった建物を義一さんが買い取り、昭和40年に旅館として経営を始めたもので、6部屋と宴会場を清子さんとともに切り盛りする。
昨年8月、地元の旅館と料亭で“レトロおもてなしの宿の会”を発足した。義一さんはその会長も務め、毎月の勉強会でもてなしの心を探っている。目標は「小ぢんまりとした旅館だからこそできる家庭的なもてなし」。その言葉どおり、食事も風呂も「おばあちゃんちに泊まったような」温かさだった。
【問い合わせ】北九州市総務観光部観光課(海峡ドラマシップ)TEL 093・331・6700【交通】北九州空港から車で50分