| |
| 十河さんの指導に見よう見まねでうどん作りに挑戦する参加者たち |
とどまるところを知らない讃岐うどんブーム。その発祥の地でうどん打ちに挑戦し、ブームに頼らない地元の試みを取材した。
香川県のほぼ中央に位置する綾南町は、讃岐にうどんを伝えたという智泉大徳の故郷。804年、遣唐使とともに長安へ渡った空海が、かの地で既に円熟していためん文化の技を故郷・讃岐に持ち帰り、弟子でおいの智泉大徳に「うどんの祖」を伝授したのだという。智泉大徳は、自身の故郷・滝宮(綾南町)で両親にうどんを振る舞った。それが、讃岐全域に伝わったとされる。
もともと讃岐は温暖で雨が少なく、稲作より小麦作りに適した土地柄。加えて良質な塩、瀬戸内海で捕れるいりこ、小豆島のしょうゆ、と役者がそろい、生まれるべくして生まれた郷土料理だが、空海に先見の明があったのかもしれない。
「道の駅滝宮」内にある「綾南町うどん会館」では、手打ちうどん体験ができる。指導してくれたのは「綾南町さぬきうどん研究会」の皆さん。会長の十河(そごう)利夫さん(79)らベテランを中心に、町職員の若手とOBら計36人が研さんを積むグループだ。
「日本一おいしいうどんが食べられます」という言葉に胸を躍らせ、見よう見まねで始めた。材料は3、4人分の中力粉400グラムに塩水を入れて、数分間かき混ぜる。塩と水の分量・濃度は季節によって、8〜10%の間で変えるそうだが、かなり塩辛い。粉に対して約50%の塩水を加える、いわゆる“多加水”が讃岐うどんの特徴のひとつ。食感の良さの秘密はここにある。少し黄色っぽくなってきたら、生地を丸める。
ここからは、ひたすら体重をかけて押し続ける。平たくしてロール状に巻き、その両端を巻き込んで、また押す。そのうちに、うっすらと汗ばんできた。次は、鏡もちを作るように隅々を中央に寄せて丸める。「寄せたところが開かんように、ぎゅうと絞って」と、十河さんの声が響く。ここで5〜10分ほど寝かせ、熟成させる。
そして延ばし工程へ。めん棒を手にすると、うどん名人になった気分だ。正方形にした生地をめん棒に巻き付けながら延ばし、手前に引く。「すかし打ちいうて、讃岐うどんだけの延ばし方です」という、十河さんの手つきはさすがだ。「16のころからうどんを打っとるけんのう」と、威勢がいい。厚さが3ミリほどになれば、出来上がり。隅を富士山の頂上に見立て、3〜4段に畳んで切った。
1時間余りのちょうど良い運動量で、おなかもすいてきた。ゆでてもらったうどんは、ショウガとネギのシンプルなかけだし汁で。所々に、きしめんかと思うような太めんも出てきたが、それも手打ちならでは。「本当に日本一かも」と、ほくそ笑んだ。
| |
| 大きな水車が目印の「道の駅滝宮」。十河さんは熱心なうどん研究家だ。 |
地元の夢を乗せたさぬきの夢2000
驚くことに讃岐うどんの9割以上が、実はオーストラリア産の小麦から作られているという。しかし、近年、「讃岐産の小麦で」という声が大きくなり、讃岐うどん専用の県産「さぬきの夢2000」が品種開発された。当初から、この県産小麦の製めん技術向上や普及に意欲的だった同会館支配人の中山雅登さん(33)も、その質の良さに胸を張る。「小麦本来の香りと甘みがあり、特にお年寄りには懐かしい味がすると人気です」。今年2月には、県から「さぬきの夢2000こだわり店」に認証された。
生産量が少ないため、農家の協力も欠かせないが、同会館では、今秋以降、地元JA管内収穫の産地指定「さぬきの夢」が登場する予定だ。
「さぬきの夢2000」のうどんはオンラインショップでも販売中。http://www.ryonan-udon.co.jp
問い合わせTEL087・876・5018(うどん作り体験は要予約、大人1500円)