今月の紙面  
開幕から投打のバランスがかみ合い、圧倒的な強さで十八年ぶりにセリーグを制覇した阪神タイガース。優勝を決めた十五日の翌日は新聞休刊日だったが、スポーツ紙では、すべての新聞で阪神が一面を飾った。そこで十六日付けの全六紙のスポーツ新聞を、いろいろな視点から読み比べてみた。
まずは一面。日刊スポーツ「星野勝ったよ…おふくろ」。スポーツ報知「星野阪神 優勝」。スポーツニッポン「母死す 星野監督 涙、涙 阪神V」。サンケイスポーツ「男泣き 星野」。東京中日スポーツ「涙キラリ 星野舞う」。デイリースポーツ「母の死隠し星野舞った 阪神タイガース優勝」。すべての新聞で、星野監督が両手、両足を広げ宙に舞っている写 真が使われている(順不同)。
裏面も今日は阪神一色。日刊スポーツ「甲子園の一番長い日」と題し、選手一同が甲子園を一周する写 真が使われている。時間ごとに優勝の一日を追った「九月十五日ドキュメント」は今でも緊張感が伝わってくる。スポーツ報知は「ダイブ ダイブ ダイブ」。大阪・道頓掘の戎橋から豪快に飛び降りるファンの写真が使われている。スポーツニッポンは「ありがとうタテジマの衣の球士たち」と題し、作家の阿久悠氏が阪神タイガース優勝記念の詩「平成球心蔵」をつづっている。サンケイスポーツは毎回連載している「ノムラの考え」。前阪神監督の野村克也氏が優勝の要因を三点に分け分析している。�@激論で変わった久万オーナー�Aセ界に一つだけの花を咲かせた星野監督�B伊良部と金本の大型補強、とポイントをしぼった指摘は読んでいて納得。東京中日スポーツ「闘将美酒濡れ甲子宴」。全紙の中で唯一、ビールかけの写真を裏面で使っている。選手からビールをかけられている星野監督はこれ以上ない満面の笑みだ。デイリースポーツ「泣いた笑った燃えた 感動甲子園」。デイリーは紙面 二十八面中、十七面が阪神の記事となっている。その紙面の中でも八面の「本紙トラ番キャップが振り返るこの18年」の記事は面白い。昭和六十年の優勝から今年の優勝まで、最下位になること十回。この十八年間、タイガースは低迷の時代が続いていた。その間、チームを担当していた合計十人の記者が“今だから話せる”苦労や裏話を披露している。また、二十六面 の「世界の国からオメデトウ」の記事も読んでいて楽しい。中国・カナダ・南アフリカ・スペイン…と世界各地から、タイガースファンの喜びの声を載せている。ファンの中には南極の“氷点下79度でガッツポーズ”したファンもいるという。記事の文末には「どこの国にいても、何をしていても阪神ファンは阪神ファン」、「六甲おろしの大合唱が成層圏を突き抜けた」と力強く宣言。タイガースをひいきにしているデイリースポーツだけあって今日の紙面は他紙とは一味違う、力のこもった記事が多かった。
選手が寄せている独占手記も注意深く見ると、各新聞で違っている。
 ◇日刊スポーツ 金本知憲
 ◇スポーツ報知 井川慶
 ◇スポニチ   今岡誠
 ◇サンスポ   赤星憲広
 ◇東京中日   島野育夫
 ◇デイリー   八木裕
ほとんどが選手の手記を載せている中で東京中日スポーツだけが島野育夫ヘッドコーチの独占手記を掲載している。トーチュウはスポーツから芸能、社会面に至るまで全二十面中、阪神の記事は合計七面。各新聞の中では一番、掲載量が少なかった。
 連載記事に注目してみると、スポーツニッポン「この日の仙言」、サンケイスポーツ「仙さん火の玉 節」、デイリースポーツ「星野監督熱血語録」というように、三紙は星野監督のコメントをそのまま載せた記事を掲載している。三紙は今シーズンを通 して、この連載をずっと続けていた。他の新聞で目に留まった連載記事は、日刊スポーツ四面 「待ったで18年」。以前に阪神で活躍し、現在は野球とは違った道で活躍している人に今回の優勝を語ってもらおうというもの。ちなみにこの日は、86年ドラフト一位 入団で、左腕のエースとして活躍した猪俣隆さん。スポーツ報知は二十六面 で大きく「V逸巨人 再建への道」の緊急連載。連続リーグ制覇の夢がついえたジャイアンツ。原監督にインタビューという形で今年のジャイアンツの闘い方を分析・検証している。「巨人の力を出し切れずに負けた」「がっぷり組めば虎に負けない」というように、スポーツ報知の紙面 からは悔しさが十分伝わってくる。毎回、巨人軍終身名誉監督・長嶋茂雄氏がジャイアンツ戦を分析する連載「見た感じた書いた長嶋茂雄」の記事もこの日は阪神。「磐石だった投手陣が野手にも信頼をもたらし、シーズンを通じた勝率の安定に大きく貢献した」と勝因を分析。この日はジャイアンツの記事も十面の右上の小さなスペースのみで、さすがにスポーツ報知もタイガース一色の紙面となっていた。
 一般紙が休刊日だったこともあり、駅の売店やコンビニではいつも以上に高く連なっていたスポーツ新聞。ある都内の駅の売店ではデイリースポーツが午前八時半の時点ですでに売り切れていた。店の人によると、普段デイリースポーツは約二十部を販売し、五〜六部が売れるくらいだそうだ。しかしこの日は、午前七時のまだ開店準備をしている最中から、お客さんがデイリースポーツを次々に購入。店側も阪神優勝と一般紙の休刊日が重なったこともあり、いつもの三倍以上、六十五部の新聞を用意したが瞬く間に売り切れたという。 
ほかの各スポーツ紙も、一般紙休刊日と阪神優勝ということで、普段の部数より約五十部ずつ多く用意した。休刊日とこのように大きな出来事が重なる日は年間を通 してもまれで、万全の対策をとったが、予想を上回る売り上げだったという。ちなみにその売店で、午前七時から午後二時までのスポーツ新聞の売り上げ数は
 ◇日刊     98部
 ◇サンスポ   95部
 ◇スポニチ   80部
 ◇デイリー   65部
 ◇報知     36部
 ◇トーチュウ  11部
のような部数だった。
 一部百二十円の東京中日スポーツ以外はすべて、一部百三十円のスポーツ新聞。だから全六紙を購入すると、合計七百七十円になる。この六紙、合計七百七十円をまとめて買う人も二十人以上いた。また、サンケイスポーツから毎週火曜日に発売されている『週刊阪神V』(一部三百円)も売れ行き好調。必ず購入する女性の常連客もいるという。この日のお客さんの中にはおつりを渡すと、「おおきに」と関西弁であいさつしていく人も多く見かけられたとか。「東京には隠れ阪神ファンが多くいるなぁ」と店の人もあらためて阪神ファンのすごさを実感したようすだった。