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休耕田が広がる「上総久保駅」の周辺には数軒の民家しかなく、のどかな風景が広がっている。世帯数も少ないため、乗降客は平均二十五人という小さい駅だ。
ここにはトタン屋根を覆うように大きく枝を広げる大イチョウがどんと腰を構えている。今月上旬には葉も黄金に色づき、ギンナンもポロポロ落ちる。駅のシンボルである。
遠く眺めると、白いハウスが見えた。農道を歩いて約十分。二十数棟ものビニールハウスをのぞいてみると、赤、黄色、紫など色とりどりのパンジーが咲きそろい、一面
花畑のようだ。ここ「井上園芸」は三十三年前に、代表の井上稔さんが始めた。現在は主に大手量
販店にパンジーやマリーゴールド、デイジー、ビオラなどを卸し、年間二十種類以上の花を育てている。ちょうど今の時期はパンジー出荷の最盛期だ。
小湊鉄道との縁も深く、同社が毎年協力する「駅からハイキング」では、同園で育てた日々草千五百鉢が、参加者にプレゼントされた。「当初は簡易の六連パックを一個ずつ切り分けて渡す予定だったのですが、『せっかく差し上げるのだから』とわざわざ稔さんがおしゃれな鉢に入れ替えてくれたのです。参加者の皆さんは喜んでいました」と小湊鉄道関係者。「時折、リュックを背負ったハイカーがふらっと立ち寄り、花を買っていきますよ。中には季節ごとにいらっしゃる中高年もいて、半日もハウスにいたこともありましたね」と妻の松栄(まつえ)さんは語る。井上さん家族七人と地元の主婦、そして息子の友人が協力して、春先までにパンジーだけで約六十三万鉢を出荷するそうだ。
また駅から二キロほどのところには、高さ二・七五メートルという木造の地蔵尊では全国一大きい座像「木造地蔵菩薩坐像」がある。
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