ぶらり単線・出会いの旅
 

鉄道部の皆さん。左上から黒川雄次工務課長、池田利彦運輸課係長、中村満義部付部長、左下から伊藤スミ子さん、田中康嗣常務取締役

 オレンジとベージュのツートンカラーのディーゼルカーと木造の駅舎。全長39・1キロという短さながら、五井駅から上総中野駅まで実に個性的。地元と一体になって、列車は今日も元気に走る。
 「この沿線の人々は愛郷精神が強くて、“おらほうの鉄道”と誇りを持っているのよ」
 月崎駅近くに住む郷土作家・遠山あきさん(86)のこの一言が心に残った。小湊鉄道の歴史や文化を地元誌に連載していた遠山さんは、郷土愛と地元の鉄道への思いやりが、みんなの中にあると語る。
 どの駅にも鉢植えの花がある。上総川間駅では地元の市原園芸高校の高校生らが花壇にボタンを植え、上総鶴舞駅では「関東の駅百選」選定を記念して地元の御園生進さん(75)が30本の桜を寄付。光風台駅では主婦が季節の花を無償で駅舎に生け、駅への愛情は深い。
 有人駅にはパワフルな“主婦駅長”と定年退職後に復職したベテラン駅長が活躍していた。上総村上駅には長谷川明子さんと高木景子さん、海士有木駅には坂巻キヌヨさん、上総三又駅には小高照さん。切符と定期券の販売や構内清掃のほかに、一人ひとりに声をかける細やかな気配りは女性ならでは。一方でキセル乗車やタバコを吸う高校生を見つければ、「わたしたちには責任がある。遠慮せずバシバシ注意するよ」と頼もしい一言も。

駅員に見送られ、今日も安全運行(上総牛久駅)

 ベテラン駅員らも負けてはいない。上総山田駅の鈴木務さん(71)、光風台駅の酒巻文之さん(62)、馬立駅の柴田勝實さん(74)と青山操さん(72)、上総牛久駅の“書の達人”鶴岡利夫さん(60)、養老渓谷駅の佐藤勝夫さん(65)らは、なおもかくしゃくとホームに立ち、乗客の安全を見守る。口々に「結局、鉄道が好きなんだ」。彼らの笑顔は、鉄道ファンの少年そのままだ。
 無人駅の構内はいつも清掃されていた。大イチョウに覆われた上総久保駅やネコの親子がたむろする高滝駅、自転車が整然と並んだ里見駅、枕木が積まれた飯給駅、トトロが見守る上総大久保駅、いすみ鉄道との乗換駅・上総中野駅などは整理整とんされ、タバコの吸い殻もない程。乗客のマナーの良さに住民の気持ちが表れていた。
 大正14年創業時の蒸気機関車からディーゼル車へ。車社会の今、私鉄の単線は苦戦を強いられているが、小湊鉄道はこれからも沿線住民とともに歴史を刻んでいく。
【来月からは「銚子電鉄」編です。情報をお寄せください】