ぶらり単線・出会いの旅
 

看板娘たちの笑顔はいつも絶えない
ふっくらと出来上がったたい焼きは90円

 東京でこの夏一番の暑さを記録した7月中旬、銚子は気温25度。日陰を選ばなくても北から吹く海風が心地よい。銚子駅から電車で4分。観音駅のホームに一歩降りると、ふわりとした風が服をはらむ。
 白い壁にパステルグリーンの縁取りが愛らしい観音駅。大正12年7月の開業。スイスの登山鉄道を意識した洋館のような駅舎に改装されたのは平成3年12月。タイルを敷き詰めたスロープをゆっくり下ると、香ばしいにおいが漂っていた。構内には「たい焼き」の文字。観音駅は“たい焼きの駅”として有名だ。「今日も暑いわね、観音様まで行くの?」と気さくに声を掛けてくれたのは観音駅の看板娘たち。山本廣子さん(58)、横後民子さん(56)、大竹美子さん(49)は毎日3人交代でカウンターに立つ。
 たこ焼き、ソフトクリーム、かき氷と多くの軽食が味わえるが、やはり人気ナンバー1はたい焼き。あずきとカスタードの2種類で、1匹90円。1列6匹出来上がるのに20分もかかり、あんこは夏場で400匹、多い日は800匹も出る。毎朝9時過ぎに開店準備を始め、6時過ぎまで立ちっぱなし。すれ違うだけでいっぱいの調理スペースで一日中鉄板と向かい合う。つぶあんを入れると型から生地が流れ出るボリュームで、1匹がずっしりと重い。きれいなタイの形とは言いがたいが、「これが人気の秘けつなのよ」と山本さんは一言。終日、小学生から高齢者までお客さんはひっきりなし。時には女子高生の恋の相談も受けるとか。「老若男女、いろいろな人が行き交う場所だから、飽きません。笑う門には福来たる、でしょう」と3人娘の笑顔は猛暑に負けない。

観音駅では女性駅員も
“観音様”と親しまれる観音堂

 たい焼きをほおばりながら、北へ100メートルほど歩くと、坂東三十三観音霊場の27番目の札所・飯沼山圓福寺がある。境内には俳人・古帳庵が詠んだ「ほととぎす 銚子は國の とっぱつれ」の句碑があり、巡礼者の姿もちらほら。なんでも、同寺の平幡良雄住職は「巡礼の会」を主宰し、毎月会員とともに全国の霊場を訪ね歩いているという。
 ここから北に200メートルほど進んだところに、“飯沼観音”“観音様”と呼ばれ、本尊である十一面観音を安置する「観音堂(本堂)」がある。728年(神亀5年)、漁師の網にかかった十一面観音像の奉安に始まり、弘仁年間(810〜824)に東国を巡っていた弘法大師が開眼したと伝えられている。毎月18日は縁日が行われ、観光客でさらににぎわうようだ。
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