ぶらり単線・出会いの旅
 

木造駅舎は味がある
 

石畳と坂が多い外川の街
 
 

県指定伝統工芸品の銚子大漁旗

 銚子駅を出発してから19分。電車が到着したのは、終点・外川(とかわ)駅だ。
 古い木造の駅舎は、1923(大正12)年開業当初のもの。NHK朝の連続テレビ小説「澪つくし」(1985年)では主人公・かをるの通学や市街地と外川を結ぶ交通としてブラウン管に登場した。
 待合室の壁に、外川の町を紹介した写真が並ぶ。これは駅周辺の魅力を再発見して観光に生かそうと、12の地元有志が中心となって活動している「外川ぶらっと」が製作している。「現在、銚子は犬吠埼灯台を中心とした観光がメーン。しかし一駅足を延ばしてもらえれば、漁師町の風情を色濃く残す美しい町並みがあります」と語るのは同会発起人の1人で、銚子電鉄鉄道部次長の向後功作さん(42)。
 外川漁港はおよそ360年前、紀州人・崎山治郎右衛門によって開かれた銚子漁業発祥の地。「町おこしは“町残し”といわれるように、今ある資源をどう生かし、人が歩く動線をいかに効率良く提案していくかがテーマ」と向後さん。“食”や“民話”など観光客が必要に合わせて選べるコースを設定し、休憩所やトイレを分かりやすくして、存分に散策を楽しんでもらえるよう演出している。また駅前では第1・3の土曜・日曜に朝市を開催。イワシやカツオ、キャベツなどを販売し、生産者と消費者の交流の場となっている。
 外川は「坂の街」といわれるほど、坂が多い。碁盤の目のように整った町には、台地から外川漁港に向かって何本もの細い坂道が走っており、瓦屋根の家の前には漁具が無造作に置かれている。「どの家からも海が望めます。帰港した船を見て迎えに行ったり、イワシの大群を見つけるためらしいです」
 駅から歩いて8分。「手描き友禅式 銚子大漁旗染元」で大漁旗ののり付け作業を見学させてもらった。江戸時代から受け継がれ、ダイナミックな絵柄の大漁旗は県指定伝統工芸品。「漁船の進水式のほか、近年は結婚や出産など祝い事の贈答品としての注文が多い」と小澤克己代表は語る。
 坂を下り、外川漁港沿いには、年間を通じてイルカやクジラなどのウオッチングを行っている銚子海洋研究所(TEL0479・24・8870)がある。「銚子は世界最大級の観賞スポット。大自然の素晴らしさを実感してほしい」と所長の宮内幸雄さん。
 どこかで見たような懐かしい風景に出合える外川は“昭和”へタイムスリップできる。