ご利益石仏
鎌倉後期に起こった地蔵信仰のひとつで、戦勝をもたらす勝軍地蔵は、「戦いに勝つ」意味で中世武士たちの信仰を集め各地に建立された。普通 、勝軍地蔵は錫丈(しゃくじょう)や如意宝珠(にょいほうじゅ)を手にし、直立か馬に乗っている。しかし、この勝軍地蔵は甲ちゅう姿でイノシシにまたがり、手綱を握るという珍しいお地蔵様。
作られたのは享保十四年(一七二九年)。この長久寺の第七世の教雄(きょうゆう)住職を中心に建立されたという。
当時、この地方はイノシシやシカが多く生息。住民たちはそれらの動物たちによって、農作物が荒らされて困っていたという。その動物を鎮めるために、このような姿の勝軍様が生まれたのだ。
それを裏付けるように、近くの旧下新田村(鶴ケ島市)に残る「村柄明細書上帳」という古文書には「当村猪鹿沢山にて作物荒らし難儀仕候」という記述が残されている。
現在、長久寺の周辺は住宅団地などが広がり、イノシシやシカなどの姿はもちろん見当たらない。往時の人々の願いはかなえられ、ご利益は十分あったのだろうが、残されたお地蔵様に現代人は何をお願いすればよいのだろうか。
東武越生線一本松駅下車、徒歩十五分。鶴舞団地入り口そば。