ご利益石仏
 
 多聞院の建立は元禄七年(一六九四)。当時の川越藩主・柳沢吉保が、この地の開拓に当たった農民たちの心のよりどころにしようと建てたものだ。その二年後、毘沙門堂も建てられ、武田信玄の守り仏の毘沙門天がまつられた。
 この毘沙門天は四センチほどの金製で、武田信玄が戦に臨む際、かぶとの中に入れていた。川中島の戦いでもこの毘沙門天のおかげで、上杉謙信の剣から逃れることができたと伝えられている。
 その毘沙門天の化身がトラで、慶応二年(一八六六)ひのえとらの年にこの一対の寅の像が建てられた。
 多聞院では「身代わり寅」として、寅のお守りを出しており、毎年五月には「寅祭り」が行われる。またその時期は境内の二百六十本のボタンの花も咲き誇る。秋が深まる今の時期には、境内の紅葉が秋空とコントラストを描き、それを目当てに訪れる人も多い。
 また、この寅はことしのプロ野球のリーグ優勝を果 たした阪神タイガースのファンの間でも有名で、関西地区ではテレビで放映されたという。しかし、優勝に熱狂し、酒を飲んで“トラ”になり、道頓堀に飛び込むのは「トラの尾を踏む」ということになりそう。熱くならず静かにご利益をいただくのが賢明。
 西武線所沢駅東口から大宮駅行き(上福岡経由)バスで中富角または地蔵前から徒歩約十五分。