ご利益石仏
 
 江戸時代、中仙道の宿場町として栄えた桶川宿。旅に行き交う人々で、街道筋は、夜遅くまでにぎわっていたという。そのような人ごみを縫うように、夜な夜な飯盛り女を買いに出かける好男子がいた。毎晩その姿が目撃され、宿場の人がその跡をつけていくと、大雲寺の中に入って行き、姿を消してしまった。なんとも不思議な話。

 しかし、この好男子は寺のお地蔵様であることが判明。やがて住職が夜遊びに出られないよう、その背中にかすがいを打ち込み、鎖で縛ってしまった。それ以来、お地蔵様はお寺の中から出られないようになってしまった。
現在、そのお地蔵様は大雲寺の本堂の左手に鎮座。赤いよだれ掛けを着けた三体のお地蔵様が並んでいるが、背中を見れば痛々しく打ち込まれたかすがいが残っており、直ぐにそれと分かるだろう。一番右手のお地蔵様が別 称では「女郎買い地蔵」と呼ばれる浮気地蔵様だ。また、台座には正徳三年(一七一三)の銘が刻まれている。
鎖を解き放たれた現在、その端正な顔立ちのお地蔵様は、夜出歩くことはなくなったのだろうか。建立以来二百九十年を生きる不名誉な名前を冠されたお地蔵様だが、平成の世ではとても穏やかな表情を浮かべ、もう夜遊びは卒業されたようである。JR高崎線桶川駅から徒歩約十分。