ご利益石仏
 
 静御前の墓のある栗橋町は、利根川治水に対する歴史を刻んできた町でもある。日光街道栗橋宿の商店街にある電信柱には、頭上はるか上に赤いテープが巻かれているのが分かる。それは、水害の記録であり、幾度も洪水に見舞われてきた記念碑的なテープだ。そんな水にまつわるのが、日光街道の要所だった栗橋関所跡のすぐ近くにある八坂神社の境内にあるコマ犬ならぬ 鯉(コイ)の石像。
 由緒書きによるとこの神社のご神体は、慶長年間に利根川がはんらんし、そのびょうびょうとした水の流れの中を、鯉と亀とが運んできたものだという。このため、この神社の魔よけとして鯉があがめられたのだろう。
 八坂神社はスサノウノミコトを祭っているということで、アマテラスによって高天原を追われ、諸国を流浪しているときに、スサノウはこの地にも立ち寄ったのだろうか。しかも、亀と鯉とがスサノウを導いてきたとすればまことにご利益満点。かつては栗橋のみならず、遠く江戸の船主たちの信仰を集めていたが、ヤマタノオロチを退治した腕前のスサノウ。今では利根川での、大物狙いの太公望たちの信心も集めているようだ。
 JR宇都宮線、東武日光線栗橋駅から徒歩十五分。八坂神社には江戸末期に造られた、関東三大みこしのひとつが保存されている。