選者 山下和夫

 

・星よりも高く登りし靴磨き晴れし五月の納戸へしまう
  埼玉・吉川市 中澤喜平治
・直しても直してもなお頼りなき夢見るわれは元校正者
  東京・小平市 山川 進
・また今朝も目を覚されたと嘆きつつ菜畑の雉子を妻は喜ぶ
  茨城・水戸市 八木澤義光
・春うららひねもす筆を運びいるわが文机のいつか夕昏
  東京・大田区 浅川寿美代
・うらうらと午睡むさぼる猫の背に春を迎える抜け毛が浮ける
  東京・足立区 黒島弘子
 
〈評〉一首め、山頂に登り立った靴を、その思い出とともに五月晴れの納戸へしまうという。「星よりも高く」とは作者のその折の心情を美しく表している。「星の夜のビバーク重ねし寝袋に五月の風を入れて安らぐ」もよかった。二首め、永年の仕事としてきた校正を、夢の中にも見る。しかも、直しても直しきれない夢。誠実な哀しみがただよう。
 
投稿は、はがきに「定年歌壇」と記入のうえ、短歌二首、住所・氏名・年齢・職業・TELを明記し、〒370-0834 高崎市南町8-7 山下和夫氏宛へお送りください。(編集部)