選者 山下和夫
音もなく降りいる雨にリストラをされし如く人形捨てられており
  東京・練馬区 山田立美
・定年は出発なりと言いきりし夫の靴を念入りに拭く
  千葉・銚子市 鈴木歌子
・遥かなるわれの戦旅の物語りを頷(うな)ずきくれし妻すでに亡し
  埼玉・飯能市 安藤正治
・この寺のこの禅堂にしかと今宵座禅組み継ぐ六百年を
  東京・東久留米市 西内康浩
・開拓団の学友しのぶハーケンを天水山に久びさに打つ
  埼玉・吉川市 中沢喜平冶
 
〈評〉一首目、二句までの状態描写 が暗い現状を暗示させ、そこに捨てられた人形に今日の不況を冷ややかに視ている。二首目は「言いきりし」に夫の覇気と覚悟がよく出ている。そして、それを受ける妻の作者もまた、「靴を念入りに拭く」と喜び対応する。「出発」と「靴」の照応がよい。夫唱婦随、共に響きあう。三首目は、そうした妻を亡くした思いが詠われる。
 
投稿は、はがきに「定年歌壇」と記入のうえ、短歌二首、住所・氏名・年齢・職業・TELを明記し、〒370-0834 高崎市南町8-7 山下和夫氏宛へお送りください。(編集部)