選者 山下和夫
・妻が書き遺した蚕飼いの日記帳ねんごろに読む春の日永に
  埼玉・飯能市 安藤正治
・老いしらむ曠日持久昨日今日桜墜道行きつ戻りつ
  千葉・市川市 伊藤忠直
・母の日の娘の送り来し花ござを敷けば初夏のほんのり香る
  千葉・酒々井町 永山康子
・疲れしと妻の早寝は珍しく息子の帰りゆきたる夜を
  神奈川・川崎市 青山和一
・名を呼べば「ハイ」と答える外孫の声聞くがため妻は電話す
  東京・調布市 菅 貞夫
 
〈評〉一首目、亡き妻の養蚕の記録を丁寧に読んでいる。それはその日の妻をたどることであり、また、夫婦の苦楽の回想ともなろう。結句の「春の日永に」にはゆったりとした作者の心の内側が見えてくる。二首目、「曠日持久」とは日々をむなしく費やしていること。悠々自適し桜を楽しんでいる自ちょうとも達観とも、ふっくらとした老いの心情。三〜五首目、家族への思いが良い。
 
投稿は、はがきに「定年歌壇」と記入のうえ、短歌二首、住所・氏名・年齢・職業・TELを明記し、〒370-0834 高崎市南町8-7 山下和夫氏宛へお送りください。(編集部)