選者 山下和夫
・望楼に兵ら集いて見し蛍戦しつつも美しかりき
  埼玉・飯能市 安藤正治
・墓地を買う契約をして夕焼を受けて帰りぬ老いたる二人
  東京・武蔵野市 佐野三郎
・病床の友の動かぬ足の爪摘みてさくら色のマニュキュアをさす
  神奈川・横浜市 岩城公子
・母の日に母に贈りしワンピース老いて今わがものと着ており
  千葉・我孫子市 小出礼子
・庭先の垣根に絡む朝顔に夏の訪れ告げられている
  茨城・土浦市 小林茂樹
 
〈評〉一首目、戦中の体験は生涯消えない影となって残っている。ふと見た蛍から思いは戦中のその日、その場につながる。結句の「美しかりき」の直切な表現は、生死の境にある戦場にあって、ほかに言い換えられない実感として響いてくる。二首目、老年の二人の心情が夕焼けの中にしみじみと映像化されている。三首目、病床の友への励まし。四首目、亡き母への追慕。
 
投稿は、はがきに「定年歌壇」と記入のうえ、短歌二首、住所・氏名・年齢・職業・TELを明記し、〒370-0834 高崎市南町8-7 山下和夫氏宛へお送りください。(編集部)