朝日の本  
「欅しぐれ」」山本一力著
 深川の老舗大店・桔梗屋のあるじ太兵衛と賭場の貸し元・霊巌寺の猪之吉は偶然に出会う。人の目利きの厳しい太兵衛は、猪之吉の人柄を感じとり酒を酌み交わすことになる。大店のあるじと貸し元のはらを割った付き合いが始まった。そんなとき、油問屋の桔梗屋乗っ取りのたくらみが明るみにでる。乗っ取り屋一味と猪之吉一党との壮烈な闘いが始まる。時代小説の醍醐味(だいごみ)を存分に味わえる。
 直木賞受賞作「あかね空」以来、久々の本格時代長編。
(1680円税込み)
「定年なし、打つ手なし」 小林信彦著

 「不自由な自営業者」たる作家はサラリーマンと違い定年のない自由業者であるが、彼らの老後の行き方について書いた本はない。一般に自営業者はサラリーマンよりも数が多いそうだ。
 中年の不安、インフレへの恐怖、老年への戸惑い、健康、痴呆の不安など迷える人たちに趣味、読書など老年問題の「傾向と対策」をたっぷりと語る。コバヤシ式総合学習のテキスト。
(1470円税込み)

「宮尾本 平家物語」 四玄武之巻
 平家一門が戦に敗れ京の都を去り、西国落ちする。そして文治元年の秋、建礼門院徳子(けれもにさま)が大原の寂光院で没するまでを描いた最終巻。
 寂光院での暮らしも6年。病を患い、極楽往生を祈願して阿弥陀仏の手に掛けた糸の一端を持ち念仏を唱える日々。その声も次第に細くなり阿波内侍や尼が声を掛けても応答なく絶命、37歳の生涯であった。
 平家物語を軍記物としてではなく、美文をなるべく残すことに努力したと著者はいう。(2310円税込み)