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佐賀藩鍋島家の庭園も
今は都民の憩いの場=鍋島松濤公園 |
渋谷駅から約1キロ歩くと、松濤に戸栗美術館。辺りは静かな高級住宅街だが、散策道となって歩道が整備され歩きやすい。旧鍋島藩屋敷跡に開館している日本でも数少ない陶磁器専門の美術館。伊万里,鍋島などの有田焼、さらに中国、朝鮮の陶磁器7000点を収蔵している。その見事な収蔵品に圧倒される。焼き物ファンにはたまらないところ。名品の数々を鑑賞して、陶磁の美を堪能して館を出る。400メートル歩くと、鍋島松濤公園。「松濤」とは茶の湯のたぎる様をいう。この地には昔、たくさんのわき水があって、良質の水を茶の湯に使ったのだろう。明治5年紀州徳川家の下屋敷だった茶畑を鍋島家が譲り受け、松濤園という茶畑を開いた跡地。わき水はかんがい用水にも使われたようだ。公園中央に池があり,水車がゆっくり回っている。池の周囲にベンチが置かれ、ここで一休み。坂を少し上がって左手に区立松濤美術館。65歳以上は無料とある。ちょっとのぞいてみようと、玄関前を二人連れの老婦人についていく。「年寄りですが、お役に立つことは何でもやりますから」と受け付けであいさつしている。この世代の人たちはなかなか謙虚だな、当然の権利のようなつもりで入ろうとした自分が照れくさかった。
井の頭線神泉駅を越えて旧山手通りへ出る。この日は大安で、沿道沿いの教会で結婚式の新郎新婦が道路脇まで出て祝福の来客にあいさつしている。
猿楽町から代官山へ。「オールドイマリ」=写真=がある。昨年11月開館した伊万里焼の店だが、右手半分はレストラン・喫茶。左半分が陶磁器店。ユニークなのは壁面にズラリと並ぶ有田焼のカップざっと2000点。好みのカップを選んでコーヒーか紅茶を飲める。さまざまなデザインに見とれてしまう。その中からカラフルな伊万里特有の1個を選んでコーヒー(650円)を注文した。家庭でもこんなカップで毎日コーヒーを楽しめられたらいいのだがと思い、帰りがけに店頭の売店をのぞくと、よく似たカップの焼き物で1万円とあった。
猿楽橋を渡って広尾へ向かう。途中に「ライス レストラン トウキョウ」に立ち寄ったが、あいにく準備中。佐賀米の食事が出ると聞いていたので、残念だった。駒沢通りを越えて聖心女子大の横を抜け、外苑西通りを渡ると、有栖川宮記念公園。その入り口南部坂近くにギャラリー「うめ吉」。佐賀県出身の画家・小島潔さんの画廊。朝日新聞購読者には額絵シリーズでおなじみ。一瞬の風のそよぎを写し取るような作風から「風の画家」と呼ばれている。あどけない少年少女の表情がいい。6月6日(日)まで「四季の詩」を展示中。7月から「童謡詩人・金子みすゞの世界」が始まる。
有栖川宮記念公園の坂を突っ切って元麻布へ向かう。この辺りは大使館も多く、公園前の商店にも公園内も土曜日午後で、買い物や憩いの外国人家族を多くみかける。いくつかの大使館を目印に坂を上り下りしながら歩いたが、道順を間違いやすい。前を行く犬を連れた女性に「XX大使館はどこですか」と聞くと、振り向いて英語で答えが返ってきた。すかさずこちらも英語で応対して、「サンキュウ」と礼をいって別れた。東南アジア系の女性だった。松濤の高級住宅街から麻布は外国のような街並みに様変わりして、同じ都内でもこの違いに驚く。一本松坂を下っていくと賢崇寺=写真。
旧鍋島藩主・鍋島勝茂公の嫡子忠直公が23歳で天然痘にかかり夭折(ようせつ)する。そのぼだいを弔うため1635年に建立された寺。当時幕府は新寺の創立を禁じていたため、勝茂公は高輪の正重寺を買収し、開創した。2・26事件の二十二士の墓もある。
焼き物と歴史を学ぶちょっと楽しい散策だった。