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昼夜問わず、ひっきりなしに人や車が通る「行人坂」
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登録有形文化財に指定されている「百段階段」。天井には花鳥画も
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閑静な住宅街のイメージがある目黒区だが、実はこの周辺は、坂の街としても有名。あちこちに、由緒ある坂の名前がいくつも残っている。その中でも、往時は主要道路として栄えていたという行人坂を歩いてみた。
JR目黒駅西口から左手へと歩を進めると、大円寺前を通って太鼓橋まで下る細い坂道がある。これが行人坂だ。路地のように道幅の狭い坂ではあるが、人や車の往来はかなり多い。目黒の坂といえば「権之助坂」の方が有名だが、行人坂は区民の生活路として今も確かに親しまれているようだ。
起伏に富む目黒の地には、昔から富士見の名所がいくつかあり、行人坂もその一つ。坂の頂上付近には、「富士見茶屋と夕日の岡」という説明板が立てられ、「江戸時代、この辺りには『富士見茶屋』があり、大勢の参詣客や旅人がここで一服、秀麗な富士の眺めを楽しんだ」との記載がある。しかし現在は一帯にビル群が立ち並び、残念ながら往時の面影は全くない。
こう配の急な坂を下っていくと、大きなプレート型の赤い坂名標が目に留まった。これは、行人坂下に居を構えて今年で74年を迎える目黒雅叙園が自前で設置した私設の標識。
「地元の人たちへ感謝の意を込めて設置させていただきました」と言うのは、同園広報担当の柚木啓さん(37)。「行人坂は、権之助坂が開かれる前は、目黒不動への参詣客で栄えた道だったようです。寛永のころ、湯殿山の修験僧たちが、坂の途中に大日如来堂を建てて修行に励んでいたとか。彼らが“行人”と呼ばれていたので、“行人坂”という名前が付けられたそうですよ」と教えてくれた
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「行人坂と同様に、百段階段もかなり急こう配ですよ」と柚木さん
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ところで目黒雅叙園には、“もうひとつの行人坂”があるのをご存じだろうか。それは、旧同園3号館にあたる「百段階段」という名の廊下だ。柚木さんいわく「山腹の傾斜に建てられたこの建物には、行人坂とちょうど並行するように廊下があります。それが、この『百段階段』。本来は廊下なんですが、傾斜に建っているため、廊下が階段状になっているんですね」
普段は非公開の「百段階段」を特別に見せてもらった。まずは、漆塗りに螺鈿(らでん)細工が施された、芸術品のように美しいエレベーターで3階へ。靴を脱ぎ、百段階段の入り口へと立つ。厚さ5センチのケヤキ板で造られた階段が果てしなく続くさまは、「圧巻」の一言。歴史を感じる見事な建築美に、思わず言葉を失ってしまった。「実際は99段しかないのですが、百段階段と称されています」と柚木さん。
特筆すべきは、百段階段の脇にある美術館のような6つの部屋。それぞれに趣が異なる部屋は、黒漆に蝶貝をはめ込んだ螺鈿や色鮮やかな日本画と浮き彫り彫刻など、豪華な装飾で埋め尽くされており、見ほれてしまう素晴らしさだ。この独特の装飾美は、日光東照宮の美学を伝えるものとされている。
その豪華けんらんな建物から“昭和の竜宮城”ともいわれた同園だが、もともと創業者の細川力蔵氏は「庶民が一日だけでも夢を見られる場所」として創設したとか。同氏の意向は今も確かに受け継がれており、柚木さんは「宿泊や結婚式場の利用でなくとも、目黒へ来たら、ランチやお茶などぜひ気軽に立ち寄ってほしい」と言う。
時空を越えた美が潜む目黒の竜宮城をまた訪れたいと思った。
普段は一般公開されていない「百段階段」の見学会と食事がセットになった特別プラン「美と匠の祭典」が行われる。期間は、18日(金)〜4月10日(日)と、4月29日(金)〜5月8日(日)。料金・食事内容はコースにより異なる。
TEL 03・5434・3854