JR日暮里駅北口から御殿坂を上りきり、七面坂を左ににらみながら下り坂を下りていくと、その先の「谷中銀座」の手前に大きな段差が現れる。
そこに存在するのはコンクリート製の緩やかな階段。1990年、地元で愛称が募集され「階段上から見る夕焼けがあまりにもすばらしい」とのことから、夕やけだんだんという、不思議だが優しい響きの名称がつけられた。しかし現在、視線の正面には高層マンションが立ちはだかり、かつての眺望は失われている。
|
| 夕やけだんだんの上からの眺め。視線の正面にはマンションが… |
「あそこはもともとがけ地だった。戦争時には防空壕 (ごう) となり、わたしもあそこへ逃げ込んでいた」と戦時を振り返るのは、谷中銀座で武藤書店 (TEL03・3821・3308) を営む、武藤高さん (77)。武藤さんは生まれも育ちも谷中っ子。
|
| 「谷中は落語の街でもある」と語る武藤さん。谷中の人にとって落語家は身近な存在。武藤さんの書店にも専用コーナーがある |
「ここは江戸の大火を避けた寺院が集まり寺町を形成。その後、関東大震災や、東京大空襲さえもくぐり抜けて生き延びた本当の下町。日本人にとっての心の故郷がここにある」と武藤さん。
また「下町が舞台のテレビドラマのロケ地としても有名で、若い年齢の観光客も増えた」という。しかしメディアの影響で若い人々が来訪する分、昔ながらの街並みに変化が訪れている。
日暮里駅から御殿坂を上ったところにある軽食喫茶「あづま家」(TEL03・3821・4946)。あんみつが自慢の甘味どころだ。ここを経営する吉田博さん (63)、昌代さん (65) 夫妻は言う。
|
|
| 御殿坂を登ったところにある「谷中せんべい」。大正の創業以来、昔ながらの味を守る |
「あづま家」を営む夫婦。「マイウー」でおなじみの、ホンジャマカ・石塚英彦さんも訪れたとか |
「この一帯は寺町なので、お盆・お彼岸などのお墓参りの際には、子ども連れの家族がうちにより、自慢のあんみつで心と体を休めてくれる。しかし今やそういうお客が徐々に減っている」と、伝統が廃れてゆく世相に寂しさを漏らす。 |