小中学校の登下校時はにぎわう坂も、それ以外の時間はあまり人や車の行き来も多くなく、カラスの鳴き声が辺りの静寂を遮る。
坂上からおとめ山公園に足を踏み入れると、昼なお暗くうっそうとした空間が広がる。森の精気が辺りに漂い、空気が一服の清涼剤に。「御禁止山─私の落合山川記」(武田助雄著・創樹社)では1962(昭和37)年ごろのおとめ山を「落合の秘境」と紹介しているが、いまだその名残をとどめている。
「おとめ山の自然を守る会」の代表・堀尾慶冶さん(79)は「明治以降この山の西側一帯は相馬家が所有していました。戦後に分割売却されて庭園も取り壊しになるというところを、地元の人たちの保存運動で新宿区立おとめ山公園になったのです。しばらく荒れ放題の時期もありましたよ」と話す。
相馬家はかつて屋敷の一部を池泉回遊式庭園「林泉園」として一般に開放していたという。そんな相馬家への恩返しからか、現在も清掃活動などで地元ボランティアが自然保存運動を続ける。 |