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  東京版 平成29年4月下旬号  
認知症題材に純愛描く  映画監督・佐々部清さん

「家族の物語を中心に人の温かさ、善意を丁寧に描いてきた」と佐々部さんは話す。ただ、「悪意、憎悪、心の闇…、それを暴力などの際どく激しい表現で見せる作品が、今の日本映画には多く、またそれが評価されている」と指摘する。「僕は意地でも人の善意に寄り添っていきます」
「八重子のハミング」5月公開
 若年性認知症の症状が進む妻の介護を続ける夫—。実話を基にした劇映画「八重子のハミング」が5月に公開される。大手映画会社の出資のない“自主的映画”。「半落ち」「ツレがうつになりまして」などを手掛けた映画監督・佐々部清さん(59)が自らプロデューサーを兼ねて完成させた。「過酷な状況の中、紡がれた夫婦の純愛の物語です」。佐々部さん自身もおととし、認知症を患った母親を亡くしている。「介護の問題が深刻さを増す、これからの日本に必要な映画です」

 《ひときわに 白髪目立つ 妻の背に 胸痛みおり日々の戦い》

 映画「八重子のハミング」の原作は、山口県萩市に住む陽(みなみ)信孝さん(78)の手記だ。陽さんの妻・八重子さんは53歳の時、若年性アルツハイマー病と診断され、12年近い闘病を経て2002年12月、65歳で死去している。病状の変化、市教育長を辞めてまで在宅介護を続けた胸中、周囲の温かさを、趣味の短歌と共につづった手記。萩の映画館運営に関わっていた陽さんと面識があった佐々部さんは8年ほど前「僕の手記が映画になりそうです」と明かされた。

 映画化の提案は大手映画会社。既に決まっているという監督、脚本家は“ビッグネーム”だった。手記を初めて読んだ時の感動を語る。「ここまで純粋に愛し合い、支え合えた夫婦がいたのかと…。いい映画になると期待しました」

44歳で監督デビュー
 同県下関市出身の佐々部さんは明治大在学中、大学の枠を超えた映画製作グループで活動。横浜放送映画専門学院(現・日本映画大)を経て、映画やテレビドラマの助監督になった。「助監督時代が長かったですね」。44歳の時、家庭用ビデオ開発競争に挑んだ技術者の物語「陽はまた昇る」(02年)で監督デビュー。その後も話題作を相次ぎ発表した。究極の夫婦愛に迫ったという「半落ち」(04年)は、日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞。「『半落ち』でも認知症はストーリーの重要な要素です」。今も続く被爆の苦悩に寄り添った「夕凪の街 桜の国」(07年)、うつ病の悲劇防止への思いを込めた「ツレがうつになりまして」(11年)、若者らの貧困と格差社会に着目した「東京難民」(14年)など、作品の多くは現代の問題と向き合っている。

 人間魚雷「回天」で出撃する若者を描いた「出口のない海」(06年)では「戦後生まれの僕たちも戦争を伝える責務があると考えた」。特攻隊員の戦後を追った「ホタル」(01年、監督:降旗康男)で助監督を務めた佐々部さんは、主演の高倉健の自問「何を撮るかでなく、何のために撮るのか」を「自分への『宿題』でもある」と捉えている。

 その一方、「僕の映画のお手本は“寅さん”です」。佐々部さんの母親は認知症発症までは、息子の監督作品公開を心待ちにしていた。「エリートでもないおふくろが笑って泣ける作品を撮ろうと、今も思っている」。だが、最愛の母親は亡くなる前、佐々部さんを「わが子」と認識できないまでになった。神奈川県川崎市に住む佐々部さんは唇をかむ。「介護を(古里に居る)妹に頼り、つらい思いをさせてしまった」

「憤りが原動力」
 そんな佐々部さんだけに、陽さんの手記の映画化を「気に掛けていた」と言う。しかし、陽さんの話から1年後、企画した映画会社に尋ねると「とっくに立ち消えになっている」。佐々部さんは率直だ。「それを原作者に知らせてもいないとは…。憤りが僕の原動力になった」。自ら「八重子のハミング」の脚本を書き、映画会社やテレビ局の映画担当部局を回った。「老老介護に直面する人たちにエールを送りたい」。だが、「地味」「若い観客を呼べない」といった理由で断られるばかり。自力での製作を決意した佐々部さんら3人がプロデューサーとなり、資金集めから始めた。萩市の協賛や古里・山口県内の企業などの出資を得て、個人からは「応援募集」。あえて「命懸けでつくる」と公言した。「直接、映画産業と関わりのない人たちの汗の結晶を頂いている。そのくらいの覚悟がないと失礼です」

発症から最期まで
 「八重子のハミング」は劇映画でありながらも、病状の変化、介護のトラブル、子どもや孫を含む家族の葛藤を発症から最期に至るまで、かなり忠実に再現した。トイレでの介助に悪戦苦闘する夫、何でも口に入れてしまう妻、暴れる妻を抱き締める夫…。佐々部さんは「きれい事ではすまない、大変な病気であることを、主に介護する側の目線からきっちり描いた」と話す。

 音楽の教師だった妻は歌詞を忘れた後も、メロディーの記憶は残していた。夫が歌を口ずさめば笑顔を取り戻し、ハミングすることも…。症状の悪化のため、「(発症後)二人が『純愛』を分かち合えたのは“一瞬”だったかも」と推し量る。「それでも作中には、愛と優しさがあふれている。永遠の絆を感じていただけるのでは…」。自身の思いと主人公のせりふは重なる。「怒りには限界があるけれど、優しさに限界はないのではないでしょうか」


©Team『八重子のハミング』
「八重子のハミング」 日本映画
 原作:陽信孝「八重子のハミング」(小学館)、監督・脚本:佐々部清、出演:升毅、高橋洋子、井上順、梅沢富美男ほか。112分。

 5月6日(土)から、有楽町スバル座(Tel.03・3212・2826)ほかで全国順次公開。

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