「NYの女優をやろうが、フランスのマダムをやろうが、Gメンをやろうがどうしても持ち前の下町っ子の部分が出てきちゃう」という木の実さん

「ドヌーブに負けない」
 人気テレビシリーズ「温泉名物女将」「万引きGメン 二階堂雪」、舞台「伝説の女優」「阿OKUNI国」など、幅広いジャンルで活躍している木の実ナナさん。押しも押されもせぬ人気女優の木の実さんだが、数年前まで更年期障害に苦しんでいたという過去を持つ。それを乗り越えたことで女優としての魅力を増した彼女が次に選んだのは、女だけのサスペンス舞台「8人の女たち」だ。

 「8人の女たち」は2002(平成14)年にカトリーヌ・ドヌーブやファニー・アルダンらを起用して映画化され、フランスで大ヒットとなった密室サスペンス。木の実さんは、ドヌーブが演じた2人の娘を持ち、夫を殺されたマダムを演じる。
 「女だけだから血みどろの舞台になるかもね(笑)。光源氏のいない源氏物語みたいな感じかしら。でも、サスペンスは真剣にやればやるほどコメディーになるの。女の人の怖さがよく分かると同時に、かわいらしさも出ると思うわ」
 映画で見られる歌や踊りは本舞台では予定されていない。
 「でも、どこかで踊っちゃおうかな、って計画しているの。ナナがやるとこういうマダムになるのよ、って見せたいじゃない? ドヌーブにも“負けたわ”、って言わせたいの」と、意気込みを見せる。
 いつも元気でエネルギッシュな笑顔がトレードマークの彼女だが、数年前まで苦しめられていた更年期障害が、大きなターニングポイントだった。
 98年に著作「キラッ=と女ざかり」(パルコ出版)でその体験を痛々しいまでに告白。今では普通に語られる更年期障害だが、木の実さん以前に更年期障害を告白した女優はいなかった。
 「こんなに苦しんでいるのに誰も答えてくれない。行く病院、病院で違うことを言われるし、ものの5分で診断が終わってしまう。自分がどんどんおかしくなっていくのが分かるのに原因が分からなくて、まるで迷路にいるみたいだった」と振り返る。めまい、のぼせ、鬱(うつ)症状にぼろぼろにされる日々。アドバイスを仰ごうにも、更年期という言葉を口にしただけで冷ややかな態度を取られてしまった経験もあり、どんどん追い詰められていった。しかし偶然に巡り合った心療内科の女医が丁寧に対処してくれて、救われた。
 「周りの人が下手に何か言ってもだめなの。ますます落ち込むだけだから。だからまず病院に行くこと。対処すれば絶対に治る。男の人にだって更年期は来るし、女性より自殺率は高いのよ。だから私が勇気を出して言ってみたの」
 現在はすっかり病のトンネルを抜け、仕事にも精力的に力を注いでいる。年に5本の2時間ものテレビドラマを抱えながら、今年は舞台「伝説の女優」の再演も行い、来年の愛・地球博では世界の観客を前におはこのミュージカル「阿国」を上演する。これまでさまざまな役柄を引き受けてきたが、ファンは彼女がどんな役を演じても「かわいい」と評する。「『伝説の女優』の役はほんとに嫌な役だったのに“かわいい”だなんて。分かんない。私、派手な割にはシャイなのよ(笑)。自分で言うなって? でもかわいさは誰もが持っているものだし、そう言っていただけることはうれしいわ」
 木の実さんのエネルギーの源は「人が好き」なこと、ときっぱり言う。「魅力は年齢に関係ないし、会った人の目線で楽しめばいいの。小学校2年生のメル友もいるわよ(笑)人を好きになるには勇気が必要だけど、自分に無いものをもらえる喜びがあるでしょ」
心待ち早く“60代”に
 もちろん、「木の実ナナ」という自分も好き。今でも休みの日に自分の昔の作品を見返すが、「今の方がいいわね」とそのたびに確信する。50代になった時、肩の力が抜けて楽になり、すごく楽しくなった。年を取るとそれだけ役の幅が広がり、今まで味わった分の痛みから、もっと深く表現できるようになる。だから先の60代を心待ちにしている。
 「色々あったほうが女って絶対きれいになるの。生きてるって戦いだから。負けちゃだめね」

定年時代11月号下旬号を見る