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「恋愛や夢などをあきらめきれない
思いは美しいと思う」と話すフォ監督
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市井の人々描く
交通手段のない山々を歩いて配達をする年老いた郵便配達人と息子の親子愛を描き、モントリオール映画祭で最優秀観客推薦賞を受賞するなど世界中で絶賛された「山の郵便配達」から4年、フォ・ジェンチイ監督(47)の待望の最新作「故郷(ふるさと)の香り」が公開中だ。「つらいことも含めていろいろな体験をしたほうが、人生は美しく、またいいものになると思うのです」と話すフォ監督。映画作りにかける思いと人生について語った。
「故郷の香り」は、「紅いコーリャン」「至福のとき」などで知られる中国の作家・モォ・イエンによる短編小説がもとになっている。10年ぶりに帰郷した故郷で再会したかつての恋人。生活に追われ、はつらつさを失った様子の彼女に主人公は負い目を感じずにはいられない。映画には初恋のせつなさ、後悔の念が静かに映されている。フォ監督は語る。
「青春には苦しさがつきまとうものです。必ずしも明るく楽しいだけの時期ではないのだけれど、振り返ってみると非常に温かい記憶、思い出になる。そういう温かさを原作に感じ、映画化を決めました」
北京電影学院美術学部を卒業したフォ監督の同期には、「初恋のきた道」「HERO 英雄」など次々と話題作を精力的に撮影するチャン・イーモウや、「始皇帝暗殺」といった歴史物で名をはせるチェン・カイコーらがいる。2人に対し、フォ監督は「山の郵便配達」で描写した親子愛に限らず、時代の流れやそれぞれの運命と折り合いを付けながら力強く生きる市井の人々を描くことを得意とする。
「基本的にわたしは人間の善良な部分を信じていますし、そういう姿勢でメガホンを握っています。そうでないと生きていてつらくなりますし。人生や世の中にはいろんなことがありますが、いい方を向いて、“人生は美しいものだ”と思っていた方が幸せに暮らしていけると思うのです」
「冬のソナタ」をはじめ現在の日本では“純愛ブーム”。「故郷の香り」でも、初恋の人を1人の人間として大切に思う主人公の純粋な気持ちが映し出されている。しかし、韓国ドラマで多く描かれる“まっすぐに突き進む愛情”に比べ、フォ監督は、「運命は変えられないとも思わないが、意思を持ちつつも受けとめていこうと思っている」と語る。その思いは、映画のクライマックス、主人公と元恋人のヌアンとヌアンの夫・ヤーバがそれぞれ自分の運命と向き合い、未来を選択するシーンからも見てとれる。「運命は思い通りにいかないこともある。けれど人生の選択にはその時とその人なりの理由があるので、誰も責めることはできませんね」と話す。
老いる寂しさもテーマに
北京映画製作所で美術を担当していただけに、「人生は美しい」がフォ監督の口癖。映画では日本にもかつてあったような懐かしい田園風景が画面いっぱいに広がる。「傷口を広げるような映画を作りたくはありません」という。見るに耐えないような事件が新聞に載っていると、即座に伏せてしまうこともあるとか。しかし、日本の老人の孤独死問題について質問すると、「聞いたことはあります」と答えた。中国でも経済の発展とともに家族と離れ、養老院に入居する老人が増えているそうだ。そういった背景もあって、1999(平成11)年にはかつてのスター俳優たちが養老院に入っているという設定で「九九艶陽天」(日本未公開)という映画を撮影し、中国で大ヒットした。
「あの映画では養老院に入居中の老人たちをいくつかのケースに分けて描きましたが、寂しさはこう解消するべき、老人はこうでなくてはという指針はありません。ふだんの生活の中から生まれる寂しさ、特に家族間で発生する寂しさには明確な解決方法はないと思っています」というが、作風はコメディータッチで、あくまで人生の美しさを追求するフォ監督ならでは仕上がりだとか。
作品の脚本はすべて監督の妻が手掛けている。数々の最優秀脚本賞を受賞する才能豊かな人だが、関係者の話によると、夫人が監督にほれ込んでいるのと子育てもあって、フォ監督以外とは仕事をしないのだそうだ。
淡々と質問に答えるわりにはちゃめっ気のある監督。インタビュー後、前日に浅草で買ったという鳥のおもちゃ(冒頭の写真参照)を自慢気に見せて、「太っていて僕に似てる(笑)漂亮〓(※口へんに馬)?(ピャオラマ・きれいでしょ?)」と現場をなごやかにする場面も。珍しい造形品にはつい手が出てしまうと告白してくれた。監督のえとはトリだそう。今後その才能がどのように羽ばたくのか、期待したい。